85話：不安フィジカルコンディション！ ページ41
貴方「……ん…？この音…。」
遠くで、聞き慣れた音がする。この音は…救急車？
頭に響いて、残り続ける音。次第に遠くなっていくはずの音が、頭の中で大きくなっていく。
貴方「っ…なに…これ……。」
この音…どこかで…。救急車なんて、どこにいても聞いているはずなのに。頭がグルグル回る感覚。胸が締め付けられる様で、痛みを伴う。夏なのに寒気に襲われて、手先が冷たくなる。呼吸が浅くなって……意識が…。
貴方「…な……んで…。」
目を閉じる寸前。何故か貴志部くんの声が聞こえた気がした。夜も遅いのに、有り得ないか……。
白い壁紙。高い屋根。私の家は、裕福ではないがそれなりにいい所だった。
両親も優しくて、大好きだった。
休みには色んな場所に出かけた。私は遊園地が大好きだった。
でも、気付いた時にはあの音が響いていた。
真っ赤な世界で、誰も笑っていない。
赤いサイレンが遠のく意識の中で、鳴り響いていた。
貴方「う…ん……。」
薄ぼんやりと視界に入ってきたのは、白いカーテン。ここ…、私の部屋じゃないや…。昨日はどうしたんだっけ。
覚醒する意識。少しダルい体を起こす。薬品の匂い…ここは、救護室？
まだ陽の光がない。時計を確認すると、4時半を指している。
貴方「……！貴志部くん……？」
ベッドの横の椅子には、器用に座りながら眠っている貴志部くんの姿があった。もしかして、あの声は本当に…？
目が閉じる寸前、私を呼ぶ声がした気がしたけど。
貴志部くんがここまで運んでくれたのかな…。
このままでは夏といえど、貴志部くんが風邪を引いてしまう。
ベッドから降りて救護室内を見渡すと、薄手のブランケットが置かれていた。貴志部くんの肩にソレをそっとかける。
貴方「……ごめんね、貴志部くん。」
そう呟くと、貴志部くんから「ん…」という声が聞こえた。寝るなら部屋に戻った方がいいかもしれない。
貴方「貴志部くん…。貴志部くん…？」
貴志部「んん……。ん…？A！？」
貴方「わっ！」
突然目を覚ました貴志部くんは、ガッと私の肩に掴みかかった。
貴志部「大丈夫か！？」
貴方「あ…う、うん…。」
貴志部「どこも怪我とか…。気分は？悪くないか？」
貴方「大丈夫…！貴志部くんがここまで運んでくれたんだよね…？」
貴志部くんの方が顔面蒼白で心配になるくらいだけれど…。
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作者名：暁兔 | 作者ホームページ：
作成日時：2022年2月25日 13時
