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参拾弐話 ページ33

『ご明察、次でやっと最後なのだよ。いやァここまで長かったね』

彼女はおどけて肩を竦めた。その調子は軽いもので決して背負っているものの重さを悟らせない。


「だったらよ、おれたちもそいつらのとこ行くぞ!ぶっ飛ばしてから仲間になれ!」



『?麦わら帽子くん、実を言うと私君達のこと気に入っちゃった。だから駄目』



「はァ?い、意味わかんねェよ!気に入ったなら良いじゃねぇか!」


『私ね、気に入ったオモチャは誰の手も届かないところに隠してしまいたい性質(タイプ)なの。』



だって、壊されてしまったら悲しいだろう?と彼女は歪に笑った。

彼女にとっては、ルフィ達が何故ここまで自身に執着するのか甚だ疑問であった。


Aを怒ったような表情で見つめるルフィと静かな笑みを湛えるA。



そこへ水を差すような高波で船が一際大きく揺れた。
空にはみるみる内に黒雲が立ちこめ、遠雷が僅かに空気を震わせる。



「嵐!?まずいわ、話は後にして帆を畳むわよ!」



航海士のナミが指示を飛ばし各々が動き始める中、
Aはハッとした表情で懐からエターナルポースを取りだした。




『間違いない…あの島の気候海域だ。私はなんて幸運(ラッキー)なのだろうね』


エターナルポースを強く握り締め、Aはメリー号の手摺りに立った。


「ちょっと危ないわよ!」


『…君たちはこのまま西に進路を取ると善い。
西には「哲学とワインの町・ストレスク」があった筈だ。善いところだよ?』




大雨で視界が奪われ、強風で誰もが動くに動けないことをいいことに彼女は別れの雰囲気を醸し出している。



「まさか…待って!」


「おいA!」



『世話になったね。それじゃあまた何処かで逢おう』





ルフィが腕を伸ばしたがもう間に合わない。








暴風吹き荒れる海へAは一瞬の内に姿を消した。








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さて、目的の島に独りで降り立ったAは、取り敢えず港で雨にうたれた荷物をひっくり返していた。




『うひゃあ、もう何処も彼処もびっしゃびしゃだ!服も調達しないと駄目か…』




羽織っていた外套は雨を含んで色が変わり、じっとりと重さを増している。
しかしそれを加味しても軽い、というか衣嚢(ポケット)が薄っぺらいような感覚を覚える。




Aは咄嗟に手を突っ込んだ。矢張り在るべきものがそこに無い。





『…遣られた。あの学者先生め…』

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まどろみマフィア(プロフ) - ぽ、ぽぽぽぽぽポートマフィア?!なんですと?!ギュフフィンフィン(ポトマが出てきて歓喜中の中也推し) (1月25日 0時) (レス) @page37 id: 2cd01fe314 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2022年11月7日 10時

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