参拾話 ページ31
ゴーイングメリー号はルフィとロビンの回復を、そして
現在航海の只中である。
『トナカイくん。全身氷漬けにされたヒトって数日寝たくらいでここまで回復するものなのかな』
「うーん、ルフィはキカクガイだからな。仕方ねぇ」
『仕方ないって君ね…』
Aとチョッパーが見下ろす先では、甲板で「凍ったおれの真似!」となんとも自虐的な芸を繰り広げているルフィ。
凄まじい程の回復力である。
「お?チョッパー、A!何の話してんだ?」
『君の話だよ』
「しししっおれか?」
噂話に気づいたルフィは腕をぐーっと伸ばして二人のいるデッキへ飛んできた。
ふんぞり返って仁王立ちする彼のせいでAの視界に影が差す。
「おれも話があるぞ!」
『何?』
「A、おれの仲間になれ!!」
Aは目をまあるくしてから、ゆっくり後ろを振り返った。
…
……
………
メリー号に長い沈黙が訪れる。
「「いやいやおめェだよ!!」」
『理解ってるよ、少し巫山戯ただけじゃないか。
…それよりもさァ、普通は船員に話を通してから勧誘するモノだろう』
「そうなのか?よしお前ら!こいつ仲間にすっけど文句あるか!」
ルフィのあまりに雑な呼び掛けにも船内のあちこちから「Aなら大歓迎よ!」だの「…構わねェ」だのと歓待の声が飛んだ。
『へえ。流石に不用心が過ぎると思うけどね』
「縁も夢があるから海に出たんだろ?なぁ乗れよ〜!!」
煮え切らない返事のAにルフィが焦れて駄々をこね始める。
『夢ねェ…有ることには有るよ』
「何かしら、気になるわ」
どこか遠い目をしたAは船の手摺りに背中を預け、指を立てると大仰な身振りでこう言った。
『私の夢はね、「この世の総てを知ること」さ』
"夢"を語っているというのに、その姿は諦めが滲んでいるようにも見えた。
『そう。
先達がその血と研鑽で編んだ知恵を、後世の愚者が裁つだなんて、そんな与太話が有って堪るか。
「空白の100年」然り、作為的に隠匿された真実を引き摺りだし、答えの無い不可思議には私が最適解を導こう。
そうして世界の総てを知りたいのだよ』
…そうすれば私を苛むこの「退屈」の正体も分かるかもしれない、と付け足した声は寂しげだ。
345人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まどろみマフィア(プロフ) - ぽ、ぽぽぽぽぽポートマフィア?!なんですと?!ギュフフィンフィン(ポトマが出てきて歓喜中の中也推し) (1月25日 0時) (レス) @page37 id: 2cd01fe314 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:翠 | 作成日時:2022年11月7日 10時