【RKRN】屋根裏から来る曲者さん弐【夢】 (ページ1)

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壱　夢だけどページ1

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　静かな長屋の外から、朝日の光が差し込む。私は布団から体を起こして、大きく伸びをした。
　さっきまで枕の上で見ていたはずの夢がぼんやりと消えていく。

　畳の上に転がった竹筒。
　見上げるほど高い背丈。
　耳元に囁かれた低い声。
　そうして何か照れるようなことを言われて、顔から火が出そうなほど体温が上がったのは。

『○○○○○○』

　現実だった？それとも、夢？

「……いや、現実だ」

　みるみるうちに頭が冴えてくる。心臓が爆走し始めて、顔に血の気が上がってくる。昨日溜め込んだ感情が溢れ出して、腹の底から叫び出したい衝動に駆られる。私はそれをグッと堪えながら、布団の端を握りしめた。

「ん……おはようA、今日は早いわね」

「ひぇっ!? あ、うん、おやすみなさい!?」

「おはよう、でしょ。寝ぼけちゃって……っていうか、なんか顔赤くない？熱？」

「熱……は、ないけど」

「そ。体調悪いなら早いとこ医務室行きなよー」

「い、『医務室』っ!?!?」

　医務室という単語に過剰反応した私に、友人は訝しげな顔をした。

「外でも走って頭冷やしてきたら」
　――という友人の助言に、私は手早く着替えて裏門から抜け出し、裏山まで一気に駆け抜ける。

　いくら屋根裏から忍び込んでくる人とはいえ、こんなところに＜あの人＞がいるはずはない。
　それはわかっているはずなのに、走っても走っても＜あの人＞のことが頭から離れない。
　あの忍び装束みたいな色が視界に入るたび、心臓が跳ねる。
　そのうち頭が真っ白になって、足を止めて、ひたすら肩で息をして。それでも頭に浮かぶのは――。

(あの人のことなんだよな)

　なんだ、私らしくない。
　俗に言うあれ、なのか。

「恋心……」

　否定的な返事をしようという考えは全く浮かばなかった。つまりはそういうことだ。
　すでに気持ちを伝えられたのだから――無意識下で私の方にも気があったんだろうから。

　って、自分が言うとなんだか恥ずかしいな。

　しかし、恋……って、具体的にどうすればいいんだろう。
　正式にお付き合いさせていただいて、二人でお出かけとか、美味しいうどんを食べに行ったり、美味しい団子を食べに行ったり……いや、食事だけじゃないか。とにかくどんどん仲良くなって、それで、あの――

「……っ」
　その先を考えるだけで、緊張で息が止まりそうだ。いや、まだ始まったばかりじゃないか。落ち着け私。まだまだ道は長いんだ。