11. 自覚症状 ページ44
※弐拾壱話〜 組頭の視点※
Aちゃんはタソガレドキ城で匿われていた時の事をあまり覚えていないのか、はたまた忘れたいのか……案外、あっさりとした反応だった。
自分としては、どちらかというとほっとした。後悔ばかり募っていたから。
そして丁重に手渡してきたのは、町で流行っている和菓子屋の煎餅。
あの和菓子屋は、例の怪しい城が経営をしている――なんて噂を耳にしたのも、丁度その頃であった。我々が調べたところによると、その噂も確かに信憑性の高いものらしかった。
忍術学園を出て尊奈門達と合流し、緊張した面持ちの部下達に煎餅を差し出す。
「っ……これ、例の和菓子屋の物じゃないですか」
「私が毒味を」
「いや構わない。Aちゃんに、この間の礼として頂いたものだ」
早速封を解き、煎餅に手を伸ばす。それに続いて部下達も恐る恐る煎餅を食べ始めた。
尊奈門は一口食べて「ん、美味しい」と呟くと、私に向かってこう言った。
「でも、Aさんは組頭と一緒に食べたかったんじゃないですか、これ」
陣左が尊奈門を軽く咎める声が聞こえる。
ん……あぁ、あの噂の話か。
好きな人と食べると結ばれる、とかいう。
「Aちゃんがそんな風に思っているように見えるか」
「はい、まぁ……組頭だってAさ――」
「そ、尊奈門の分、要らないなら貰ってしまうぞ!!!!」
陣左が慌てたように尊奈門の台詞を遮り、尊奈門は驚いて口を閉ざした。
Aちゃんが一緒に煎餅を食べたい人――即ち好きな人、が私であると。
私の好きな人が、Aちゃんであると。
自分で認めるよりも先に、他人に気づかれていたんだな。そういえば、伏木蔵くんだって気づいていた。
そうかもねぇ、なんて返事をしながら煎餅を頬張る。
こうして曖昧だった私の感情は、『私はAちゃんのことが好きだ』と明確に象られてしまった。
そんな自覚、この時点では全く無かったのだけれど。
143人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
廬。(プロフ) - 最高です……どうか続編頑張ってください……!! (2019年11月1日 13時) (レス) id: af811dac15 (このIDを非表示/違反報告)
鹿子木(プロフ) - ありがとうございます。ご馳走様でした。これからも頑張って下さい。 (2018年10月3日 4時) (レス) id: d5c9836270 (このIDを非表示/違反報告)
よしのや(プロフ) - 妖狐の巴衛さん» そのセリフは雑渡さんの発言になります!! まだまだ小説初心者ゆえ、表現が拙く分かりづらくて申し訳ないですm(_ _)m コメントありがとうございました!! (2018年6月17日 23時) (レス) id: 7e36950532 (このIDを非表示/違反報告)
妖狐の巴衛(プロフ) - 「……尊奈門、忍術学園の忍たまだ」は誰がかけた言葉なんですか? (2018年6月17日 21時) (レス) id: 2ff3e29f1d (このIDを非表示/違反報告)
よしのや(プロフ) - サラさん» ありがとうございます!! そう言っていただけると、すっごく励みになります(=´▽`=) (2018年4月5日 22時) (レス) id: 5bb94c3c23 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:よしのや | 作成日時:2018年3月27日 20時