伝えたいこと (ページ6)

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クスクス笑う景星。

すると頭上から注意喚起の声が降ってくる。

輪に加わったのは高地保芽衣。

こちらは高校からの友人だ。

性格はばっちこい諍いとばかりに無遠慮で、言いたい事は必ず口にする。

だが精根が曲がっているわけではないので、言うことに間違いがないのも事実。

各方面からトラブルメーカー認定されている、残念な女子である。

「川見ちゃん、普段はほわほわしているけど怒ると怖いタイプだよ」

芽衣は足を組み、素足に履いた上履きを半分脱いでぷらぷらさせながら、楽しそうに笑う。

そうだ、担任は川見だった。

今度は忘れないようにしよう。

「まるで実体験してきたような言い方だな、芽衣」

「まさにそうだしね。
この前も川見ちゃんから逃げてる時、二階の窓から飛び降りたんだけど、けっこうな勢いでキレてた。
怖かったなー」

「そりゃキレるよ・・・」

「まずなんで追われたんだよ」

相変わらず、頭のネジが飛んでいるようで。

実際に目を向けてみる。

坂木は今日も一人で昼食をとっていた。

昨日あれだけ会話したが、今日はまだ声をかけていない。

ただ目が合うと、かすかな笑顔を見せてくれる。

昨日の今日では、そんなものだ。

「なあ、小花井先生ってどういう人かわかる？」

二人はある程度知っているようで、各々情報を口にする。

「書道の先生だろ？
俺も話したことはないけど、かなり厳しい人だとは聞くな」

「書道部はいっつも泣かされているらしいねぇ」

見た目通りキツイ人のようだ。

そう聞くと会うのが怖くなってきた。

「あとプロの書道家でもあるらしいね。
字書いて売ってるんだって」

「へぇ、そりゃすごい」

その時、校内アナウンスのチャイムが鳴る。

呼び出しか、と聞き流そうとしたが、残念なことに他人事ではなかった。

「二年三組内山昂輝、至急生徒指導室に来なさい」

繰り返される呼び出しを耳に、俺は項垂れる。

「ついに落雷ね」

「まあ、日頃の行いだな」

芽衣と景星は納得したような表情で俺の肩を叩いた。

だがこれがただの生徒指導でないことは、薄々感づいていた。

なぜならアナウンスの声が、小花井先生のものだったからだ。

何気なく坂木の方を見る。

何やら坂木も、俺に目を向ける。

その顔がどこか緊張しているように見えたのが、少し気になった。