伝えたいこと (ページ16)

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本日のおしゃべり会にはお茶請けがあった。

坂木の用意したクッキーだ。

見た目や包装はシンプルだが、味はかなりのものである。

おそらく有名な洋菓子店のものだろう。

坂木もお気に入りなのか、褒めるとてれるように頬を染めていた。

話題を変えてからも、坂木とのおしゃべりは弾む。

ただ胸にある言えなかった言葉は、栓のようにつっかえていた。

なあ坂木、あの二人とも話してみない？

きっと拒否される。

そうした予想が、その言葉を押しとどめさせた。

日も暮れてきたので、そろそろ帰ることに。

坂木は公園に隣接する駅から都電を利用するので、駅まで送っていく。

彼女は俺の斜め後ろをついてくる。

歩くのが速いのかとスピードを緩めるも、距離感は変わらず。

その位置が落ち着くらしい。

のどかな風景の中を連れ立って歩くと、仲良くなったと実感する。

坂木といるほわほわした時間は心地よく、失うのは惜しい。

ならば余計なことを考える必要はないのかもしれない。

坂木をクラスに馴染ませようとか、友達を増やそうとか、おこがましいことだろう。

二人だけの秘密で、それでいいじゃないか。

「あの、坂木」

駅構内に入り、都電の停留所まで僅かとなったところで、俺は彼女を呼び止めた。

坂木は振り返り、俺の言葉をじっと待つ。

「明日さ、学校のどこか二人になれるところで、一緒に昼・・・」

「昂輝？」

小悪魔のようや声が俺、そして坂木の鼓膜を撫でる。

毎日のように聞いている声だ。

誰のものなのかなど、確認するまでもない。

今はただ、目の前の少女の顔が青ざめていく事実のみ、心を占めていた。

「芽依・・・景星・・・」

二人は俺と坂木を遠巻きに見つめていた。

景星は開いた口が塞がらない、といった表情。

そして芽依は、最初はぽかんとしていたが、徐々におもちゃを見つけた悪ガキのような顔になっていく。

「昂輝の彼女は、坂木ちゃんだったのかーっ！」

大声で叫ぶ芽依に、坂木の顔は絶望よりも羞恥が色濃くなった。

「ばっ、やめろ！」

「そ、そうだったのか昂輝！」

「ち、ちがっ・・・あー、もう！」

俺は坂木の手を取り、走り出す。

「坂木っ、この場は一旦逃げよう！」

だがその耳には届いていないようだ。

状況の整理が追いついておらず、頭をくらくらさせながらなすがままに引っ張られていた。