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「悪い、この後用があるんだ」
「ならしょうがない・・・ってこんなやりとり、最近増えたよな、芽依」
「ね。
なに昂輝、彼女でもできた？」
「どうしてそうなる」
若い者はこれだから。
生活に変化があるとすぐ異性を絡めてくる。
まあ、原因は異性なのだが。
「最近の昂輝、妙でしょ。
放課後すぐに帰って・・・なにより、遅刻が減ったわ！」
「いいことだろうが」
「カタストロフの前兆だわ・・・」
「なんでだよ、わなわなすんな」
その後、問いただしてくる景星と芽依をいなし、そそくさと学校を出る。
ふたりの言い分には、おおよそ間違いはなかった。
放課後すぐに学校を出るのは、今日のような約束があるからだ。
遅刻が少なくなったのは、上手くは言えないが、登校するのに俺なんかよりよっぽど勇気のいる子が、平然と無遅刻無欠席を更新しているのを知ったからだ。
「よ、坂木」
区立公園内の一角、青い屋根の下、ベンチに座る坂木は愛嬌のある笑顔で出迎えた。
坂木とこのベンチで遭遇してから早二週間。
あれから何度こうして会ったか。
界隈の中で生まれる時間差も、もう身体に馴染んでいる。
俺と坂木は順調に、友達になろうとしていた。
「あと一カ月もすれば中間テストかあ、早いなあ」
俺はテーブルに突っ伏し、憂鬱をため息で表す。
ペンの音が聞こえてきたので顔を上げると、坂木がせっせと声を文字にしていた。
『内山くんの成績は、どれくらいなのですか？』
「普通かな。
世界史なんかは赤とのせめぎ合いだけど」
坂木はおかしそうに目尻を下げ、えくぼを作っていた。
他人事だと思いおって。
「坂木は成績いいだろ。
小テスト、いつもいい点だもんな」
『なんで知ってるのですか？』
「坂木はもう少し氣功の練習をした方がいいな。
背後が常にガラ空きだぞ・・・あっ、ごめんごめん。
やめて、角はさすがにやめて」
スケッチブックを縦に持ち上げる坂木に、俺はひたすら頭を下げる。
坂木でもこうして顔を赤らめ、怒りを露わにすることはある。
おかしければ、もちろん笑う。
『それより、奇行の訓練ってなんですか？』
あと、ちょっと天然だ。
二週間前までは知り得なかったが、彼女はそこらにいる女の子となんら変わりない。
でもただ一つの要素が、坂木を孤独にする。
「・・・じゃあ今度は直接聞きに行くよ、テストの点」
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作者名：ゆん | 作成日時：2018年4月14日 23時
