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、、 ページ11

それには俺も茫然とする。

言葉の意味も笑顔の理由も、思い当たるものがなかった。

『家事を言い訳にしないんですね』

「え・・・あっ」

どうしよう、この子勘違いしている。

俺のことを何か、母親想いの母子家庭少年だと思っておいでだ。

「い、いや・・・優しいとかじゃ、別に・・・」

「優しいです」

その声は、俺が言い切るよりも早く耳に届いた。

聞き慣れない、でも昨日確かに聞いた、坂木の肉声。

制限された十文字のいちの、六文字だ。

「・・・その根拠、一体どこから持ってきたんだ・・・?」

尋ねると、坂木は自信満々の表情でペンを走らせる。

『昨日ここで私に、ゆっくりでいいよって言ってくれました』

「・・・いや、それはわりと誰にも言えるような」

『そんなことはありません』

坂木は書き続ける中でふいに、自虐するような微笑みを浮かべた。

『普通の人からすれば、私との会話は面倒です』

「・・・・・・」

『でも内山くんは昨日、どんどん私に話しかけてくれました』

『内山くんは、すごくすごく、優しい人です』

その一文は筆圧でわかる、今までで一番の力説であった。

くだらない人間性を露呈していたはずなのに、なんだこのぬくい空気感は。

仕方ない。

なぜなら坂木の目に映る俺はもう、優しい人間だと断定されてしまったのだ。

この子の心はどれほどまでに、純白なのだろうか。

「・・・坂木も優しいよ、優しすぎるくらいだ」

呟くと、坂木は真っ赤な顔で両手を振っていた。

ただ慌てすぎて持っていたスケッチブックやペンをぼろぼろと落としてしまう。

これには彼女もぎょっとしていた。

「あーあーあーあー」

笑いながらそれらを拾うと、彼女はへこへこ頭を下げながら受け取る。

その顔は「やってしまいました・・・」と言わんばかりの気恥ずかしそうな笑顔であった。

その後、俺は自分でも驚くほどスムーズに坂木と会話ができた。

きっと恐怖より何よりも、彼女への好奇心が勝ってしまったのだろう。

俺は坂木と、友達になりたかったのだ。









帰りのHR終了と同時に、景星と芽依が声を掛けてきた。

「昂輝、この後カラオケ行くかって話になってるんだけど、どうだ?」

「暇でしょ?」

景星は爽やかな笑顔で、芽依は小馬鹿にするような笑顔でこんなお誘いをしてくる。

ただ残念ながら、それに乗ることはできない。

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作者名:ゆん | 作成日時:2018年4月14日 23時

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