検索窓
今日:8 hit、昨日:0 hit、合計:2,382 hit

、、 ページ2

「そりゃあ担任も、生徒に助けを求めたくなるよな」

新年度のクラス替えにより、厄介者を一身に背負うクラスが誕生した。

息を吐くように遅刻する男子。

これは僕だ。

歯に衣着せる気の無い傍若無人女子。

これは芽衣。

そしてもう一人は、ここでは触れないことにする。

厄介者と烙印を押してしまうのは、少しかわいそうな気がするし。

とにかくそんなクラスの担任とは、よっぽど激務なのだろう。

「川・・・川、なんだっけ・・・。
川ちゃん先生に、栄光あれ」

名も思い出せない教師に祈りを捧げていた、その時だ。

ポツポツと水滴が地面を濡らす。

あっという間に強烈な豪雨へと発展した。

「マジか」

悪態をつく間にも、服や髪は濡れていく。

通い詰めた公園だけあって、雨宿りに最適な場所はすぐ思いついた。

散弾銃のような雨の中、走り続ければ徐々に見えてくる。

新緑の木々に囲まれた、小さな丘の上に立つ青い屋根。

階段を二段飛ばしで駆け上がり、やっとの思いで到達する。

そこで人心地、とはならなかった。

「あ・・・」

ガラス玉のような目が、俺を見つめる。

古ぼけて深く変色した木のテーブルと、それを囲う四つのベンチ。

びしょ濡れの彼女はそこに腰をかけ、声なく、驚嘆の表情で俺を迎えた。

亜麻色の髪はぺたりと肌にひっつき、頬はほんのり赤らんでいる。

触れれば砕けそうな身体は、俺を見つけた直後ビクッと揺れた。

はじめまして、なんて言う必要はない。

彼女も俺も、互いを知っている。

俺は、ふいとその名を口にする。

「坂木・・・」

もう一人の厄介者の、その名字を。

名前は忘れた。









坂木とは、今年初めてクラスメートになった。

噂は耳にしていた。

同じ学年であれば、きっと誰でも知っているだろう。

彼女は、話すことができない。

声が出ないのだ。

ただしコミュニケーションがとれないわけではない。

他者の声は届くので、筆談は可能だ。

しかしそれすらも、彼女にとっては難しいのかもしれない。

過去に何かあったのだろうか、彼女は話しかけられると挙動不審になってしまう。

緊張で顔が強張り、びくびく震えるのだ。

坂木に悪気があるわけじゃない。

そんなこと誰だってわかっている。

彼女の欠点を取り立てて攻撃するほど、子供ではない。

でもきっぱり割り切って彼女に触れられるほど、大人でもない。

、、→←1



目次へ作品を作る
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (2 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
4人がお気に入り
設定タグ:内山昂輝 , 声優 , 恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ゆん | 作成日時:2018年4月14日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。