ぬくい 太宰生誕記念 ページ34
「今日はこの後何かご予定があるのですか、中原さん」
日が沈み始めた空を見上げている時、そう静かに聞いてきたのは芥川だった
此奴も分かっているだろうに、何事も無いような顔をしている
「まあな、お前も分かってんだろ、まあそんな訳で今日はそこまで時間が無え。さっさと片つけるぞ」
「承知」
今は殲滅任務中だ。いつまでも話呆けている訳にはいかない
「おっし、突入しろっ」
「「了解」」
中也の短い言葉を合図に無数の銃声が鳴り響く
後ろに控えていた芥川は既にいない
中也も真っ直ぐ足を進めていった
大きな破壊音を最後に銃声は途絶えた
「中原さん」
破壊音の音源となった中也の後ろに控えるように芥川が立つ
「殲滅完了。逃走者も居ないと思われます。押収した武器と捕らえた連中は如何なさいますか」
「どっちも紅葉の姐さんに回せ、もう待機してる」
「了解しました。後は我々がやります故、中原幹部は報告へ」
「悪いな」
芥川の上司への気遣いをありがたく思いながら中也はその場を離れた
さっさと首領に報告を済ませて帰路に着く
家の扉を開けても予想通り、毎日のように人の家に上り込んでくるどこぞの包帯無駄使い装置は居なかった
今日は太宰の誕生日だ
太宰は、また一年生きながらえてしまったと誕生日を祝われるのを嫌うけれど、『中也とまた一年一緒に居られたお祝いなら、まあ悪くないかもね』なんて昔言われたから、中也や他の身近な人間は例外なのだろう
あの時はポロリと太宰の口から零れた純粋な言葉にしばらく頬の熱が引かなかった覚えがある
そう思うと昔、何も知らず何の気なしに祝いの言葉をかけて太宰の機嫌を損ね、最終的に涙を浮かべて震え上がらされていた黒服達が憐れになる
『私、君に祝われても一つも嬉しくないのだけど』なんて絶対零度の声と表情で言うものだから、自分との対応の差に思わず笑ってしまった。今思えば可哀想な話だ
小さく笑いながら黒いエプロンをつけキッチンに立つ
今日のメニューは蟹玉だ
ずっと蟹系の料理を考えていた。まあでも、蟹玉になったのは、気分だ。なんか卵が食べたかった
調味料を加えたあんの味を確認して卵とボウルに手を伸ばすと、廊下側からガチャリと鍵の開く音と、すぐ後に扉の開く音がした
帰ったか、と気をとられているとボウルの卵に少し殻が入った。彼奴のせいだ。彼の野郎
するりと首に長い腕が巻き付く
「ただいま、中也」
「おう、…手前のせいで殻入った」
「えぇ〜…」
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りんり - 二次オタコミュ障さん» 太中を皆の前でいちゃつかせるの大好きです笑 了解しました! (2018年9月27日 22時) (レス) id: 0f7281d890 (このIDを非表示/違反報告)
二次オタコミュ障(プロフ) - 何度目かのリクエストすみませんm(_ _)m 超バカップルな太中で、周りが見てて恥ずかしくなるくらいいちゃいちゃしてる様子を書いて欲しいです! (2018年9月27日 20時) (レス) id: 39b267f283 (このIDを非表示/違反報告)
りんり - 二次オタコミュ障さん» よ、よかったぁ…毎回本当に素敵なネタありがとうございます! (2018年9月11日 22時) (レス) id: 0f7281d890 (このIDを非表示/違反報告)
二次オタコミュ障(プロフ) - あぁぁぁ、最高です・・・っ! (2018年9月11日 20時) (レス) id: 39b267f283 (このIDを非表示/違反報告)
りんり - 二次オタコミュ障さん» 勿論です!リクエストありがとうございます! (2018年9月7日 22時) (レス) id: 0f7281d890 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんり | 作成日時:2018年3月25日 21時