浴衣 *リクエスト* ページ32
『そうじゃ太宰、今週末は暇かえ?』
あれは何時のことだったか。そんなことを考えながら質の良い浴衣に袖を通す
深い紺が肌にしっくりと馴染む感覚にゆるりと頬を緩めた
なんだかんだ言って紅葉の姐さんのおねだりは断れない
それを知ってのあの愛らしい笑顔だろう
『私の考えに付き合ってくれんか?』
太宰は弱った笑みを浮かべながら濃紺の浴衣を纏って一人歩いていた。流石に浴衣なので首もとの包帯はほどいた
街中には太宰の他にもちらほらと浴衣を着た人が歩いている。皆今日の夏祭りを楽しみにしていたのだろう。明るい顔つきで同じ方向へ歩いていく
もうすぐ彼との待ち合わせ場所だな、なんて考えていると、何かにとん、と背後から軽くぶつかられた
犯人に大方の予想をつけて振り返ると、予想とは違うところで裏切られた
「これはこれは…」
太宰を見上げる青い瞳は夕闇に映え美しく、その左では橙の髪がいつもと違い纏められている。そして何より彼が身を包む紅の花が浮かんだ女物の浴衣が目を引いた
「よく似合っているよ、中也」
「うるせえ馬ぁ鹿」
声は何時もと変わらない中也が斜め下に顔を逸らすと控えめな簪の飾りが揺れた
「ほら、早くいこうよ」
するりと手をさらうと弱く握り返されるのを確認して歩き出す
カラコロと下駄の音と、遠くで聞こえる風鈴の音が耳に涼しい
ふと、横の中也を覗くと、此方を見ていたようで、ふいっと視線を逸らされる
「ん〜?どうしたの?」
「…何でも無え」
「まさか見とれてたとか?」
「ばっ…違えっ」
図星を突かれた様で、目を軽く開いて頬を染める中也が愛らしくて仕方がない
「可愛いなあ、もう」
「ちょっと黙ってろ糞鯖」
照れてふて腐れたように少し俯いた中也の項が目に入る
思わず目を細めると、優しくそこを撫でてみる
「ひっ!?…手前!!」
「ところで中也ぁ」
睨んでくる目を躱すように話題を変える
「姐さんどんな感じだった?」
「…やる気に満ち溢れて、カメラが火ぃ噴いてた。今月一楽しそうにしてた」
少し疲れたように話す中也
昔中也と共に着飾らせられて何度も写真撮影会をさせられたのをよく覚えている
「それは…お疲れ様だね。まあ、でも今からは楽しむ時間だ」
中也に向かって優しく微笑む
「一緒に楽しもうか、中也」
続きます
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りんり - 二次オタコミュ障さん» 太中を皆の前でいちゃつかせるの大好きです笑 了解しました! (2018年9月27日 22時) (レス) id: 0f7281d890 (このIDを非表示/違反報告)
二次オタコミュ障(プロフ) - 何度目かのリクエストすみませんm(_ _)m 超バカップルな太中で、周りが見てて恥ずかしくなるくらいいちゃいちゃしてる様子を書いて欲しいです! (2018年9月27日 20時) (レス) id: 39b267f283 (このIDを非表示/違反報告)
りんり - 二次オタコミュ障さん» よ、よかったぁ…毎回本当に素敵なネタありがとうございます! (2018年9月11日 22時) (レス) id: 0f7281d890 (このIDを非表示/違反報告)
二次オタコミュ障(プロフ) - あぁぁぁ、最高です・・・っ! (2018年9月11日 20時) (レス) id: 39b267f283 (このIDを非表示/違反報告)
りんり - 二次オタコミュ障さん» 勿論です!リクエストありがとうございます! (2018年9月7日 22時) (レス) id: 0f7281d890 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんり | 作成日時:2018年3月25日 21時