第三章 ある探偵社の日常 ページ14
武装探偵社事務所は赤茶けた煉瓦造の建築物の四階にある。探偵社にあるのは事務所フロア、応接・会議室、社長室、医務室、手術室、給油室である。
時刻は夜。事務員は殆どが帰宅の途につき、残っている人影は疎らだ。
けれど今夜、調査員達は会議室に強制招集を掛けられている。
理由は昨日拾った虎の少年、中島敦だ。彼に課す入社試験決定会議の詳細を決める為に全員が招集された。
…私の時の入社試験は…きっと話しても退屈に違いないから割合しておく。
序でに会議の途中経過も割合しておく。
因みに何でこんなにも割合するのかと言えば、それにはちゃんとした理由がある。
割合するには済まされない事案が、起こったからだ。
「…私が人質役ゥ?!」
私はつい声を荒げてしまうのも無理はない。少なくとも私にとっては。
例え文豪ストレイドッグス嫌いの私でも、“私が人質役にはならない”という事が決まっているのは知っていたからだった。
それなのに、こんな結果になってしまったのはどういうわけか?
否、厳正なる籤の結果だったとしてもわかる。イカサマを仕掛けた者がいる筈だ。
私は動揺の余り何時もの冷静さを忘れ、キョロキョロ辺りを見渡した。
そしてハッと思い当たる節を見つけた。
「…治?」
私は沸々込み上げて来る怒りを何とか抑え、実兄をジロリと睨んだ。
当の本人はいけしゃあしゃあと、「だってえ」と甘ったれた声を出す。
「視たかったんだもの。
Aが人質になって『治お兄ちゃん助けて』って言うところ」
「そんな風に呼んだ事ないわよ!!」
私は弁明する為に叫ぶが時既に遅し。
周りの探偵達は「私の弱味を掴んでやった」と言わんばかりの薄笑みを浮かべていた。
例外と言えば、私と同様に兄に嵌められたらしい谷崎君くらいだった。
けれど如何やら彼はイカサマを仕掛けて逆に仕掛け返されてしまった方らしい。
厳正でも何でもない籤の結果、谷崎君はぶっ飛んだ爆弾魔役、私は普段見せた事もない手弱女な人質役をやる事になってしまったのだった。
因みにこの籤の結果に納得行っていない者がもう一名いた。
兄のイカサマ返しに一枚噛んでいた谷崎ナオミである。
如何も、治との賭博に負けて、渋々人質役を私に譲渡したらしい(甚だ迷惑な話である)。
「羨ましいですわ、私も人質役がやりたかったのに。
人質役をやって兄様に拘束されたり脅されたりしたかったですわ」
などと頬を膨らませて不服そうだった。
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有原霊花(プロフ) - とある病、等の表現は出来ないのでしょうか?後からターナーの症状が物語に影響するのなら納得いきますが… (2019年8月5日 7時) (レス) id: 70a887fc81 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - 有原霊花さん» 大変失礼いたしました。しかしこれはキャラクターの設定の一つである事を理解していただきたく思っております。 (2019年8月5日 3時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
有原霊花(プロフ) - 私はターナーにかかっているものです。そう易々と病名をネタに使われるのは不快なので、やめてほしいです。 (2019年8月5日 0時) (レス) id: 5869a0a1cd (このIDを非表示/違反報告)
由紀(プロフ) - 雪菓さん» すみません、いきなりなんですけど黒の時代の太宰さんのタイプの女性が「何も聞かない女性」とwiki先生が言っていたんですけど、もしかしてそれを意識して書いているんですか? (2017年11月23日 21時) (レス) id: d1693c1caf (このIDを非表示/違反報告)
雪菓(プロフ) - サラさん» わわわ、続編あったのですね、、、!!早とちりしてしまいました笑続編も楽しみにしています!! (2017年7月31日 15時) (レス) id: a8c1e7bbe3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サラ | 作成日時:2017年7月27日 17時