【文スト】太宰治の奮闘記録

本調子とは ページ13

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ともすればしかし――…



「A、私別に酔ってないよ？」

『しー！もう、勝手な事云わないで下さいよ』


先程のおじさんから程離れた私の前で、小声でこっそりと怒るA



「でも否定しない辺り、満更でもないんじゃない？」

『違います、あのおじさん少し前から執拗くて、敢えて否定しなかっただけです』

「二度とここに来れないようにしてあげようか？」

『物騒な事云わないで下さい』



それだけ云って、例のおじさんに呼ばれて又対応しにいくAだが

はたから見ても、殊更厭がっているようには見えない


流石の営業スマイルだ

そんな彼女を観察していると、はたりと思った



「……若しかして、気付いてないだけで私も内心厭がられてたりするのかな…」



否、そんな筈は無い


「……え、無いよね…？」

『何がですか？』

「いや、こっちの話…」


怪訝に首を傾げるAに、余計に不安が募る



――私、いつからこんな女々しい男になったっけ…


いつもなら到底有り得ない負のループに迷い込んでる事に気付いて、グラスの残りを一気に流し込む


この間一つ吹っ切れたばかりなのに

如何して彼女の事になると、こうも調子の悪い頭の回転になるのだろうか



「恋って難しい……」

『……其れ、私の前で云うのやめてもらえませんか…』

「君が私の事を好きになれば万事解決なのに」

『ついに私の所為にし始めましたね』


冗談めかしく云ってくすくすと笑うAは、悔しいが可愛い事山の如しだ



「抱きしめてもいい？」

『やめて下さい』



うん、急に冷める所も、果てしなく可愛い


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