【文スト】太宰治の奮闘記録

相棒の教え ページ9

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「よォ、浮かねぇ顔だな、何回振られてきた？」

「軽く十回くらいかな」

「はっ、期待以上だな」


帰宅すると、簡単に笑い飛ばしてくる生意気な相棒の出迎え


「中也って、彼女居た事あったっけ」

「あるわ莫迦にしてンのか」

「身長にそぐわない恋愛経験だったりする？」

「凄ぇ聞き捨てならねぇけど少なくとも手前よりはマシだと思うぜ」


本当生意気

中也の癖に一丁前に真面な恋愛してるなんて



「……如何やって付き合ったの？」

「何だ手前、自信失くしてんのか？」

「真逆、只、君の恋愛遍歴も偶には聞いてあげようと思って」


すんなり図星に近い所を突かれて、ほんの少しだけ焦った


彼女に対する自信じゃなくて、自分に対する自信だが



「――まァ、何があったか知らねぇが、俺が思うに、手前は素直過ぎンだよ」

「素直？私が？」



真逆、私程素直という言葉が似合わない人は居ないだろうと思うが



「押して駄目なら引け」

「はあ？何其れ」



得意気に説く中也に、怪訝に聞き返した所で、私の携帯が着信を知らせた


液晶に表示された名前を見て目を見開く


「何処の女の名前だ？」

「失礼な事云わないでよ、私はA以外の女に興味無い」

「あー、其奴か、手前を苦戦させてンのは」


面白そうに云う中也に無視を決め込んで、応答釦を押そうとすると


「一寸待て」


と、ストップが掛かった


「何？」

「そういう所だろ、莫迦みてぇに尻尾振らずに一寸は溜めろよ」

「真逆とは思うけど、私にAからの電話を無視しろって云うの？」

「あァ、押して駄目なら引け、だ」


にやりと口角を上げた中也だが


そんな事をしてる間に、鳴っていた着信音が途切れた



「無駄だよ、彼女は私に興味が無いんだ、出なくても何も思わないよ」

「……自分で云ってて悲しくならねぇか？」

「うん、改めて口にすると結構ダメージくらう」


何やってるんだ私は

いつになくマイナス思考になっている事に気付いて、流石に溜め息が出る


女性を大事にするなんて、今迄した事無かったから、如何すればいいか判らないんだ


「もう頭爆発しそう」

「やめろよ明日地球が滅びそうな事云うの」

「ねえ、掛け直してもいい？」


携帯を開いて、リダイヤルの画面にして、後は発信釦を押すだけ

そんな私を見た中也は、呆れ混じりの溜め息を吐いて、「重症だな」と


いつもなら一つ二つ云い返すが、その侭聞き流して、携帯を握り締めて自室へ行くべく立ち上がった


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