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23.ご褒美 ページ30

「はぁ…はぁ…」

「今日はここまでだ」

仰向けに寝転がり、肩で息をする私と余裕を残して外套を拾う兄さん。

私の異能は、物体を変化させるものだが、人体を変形させることは出来ないそうだ。

攻撃する際は精々地面を変形させ、相手を拘束したり、埋め込んだりするくらいだろう。

「1本も取れなければ、撫で撫ではお預けだよ」

にたりと微笑んだ兄さんの顔を見ると、意地でも取りたくなった。

扉へ向かっていく兄さんの隙を見て、異能を発動させる。

何かを感じ取った兄さんはこちらへ振り返るが、ピタリと動きを止めた。

私が地面を変形させ、鋭く尖らせたものを兄さんの鼻先へ突きつけていたからだ。

「…やるね」

棘を突きつけられ、少しでも動けば刺さるくらいなのに、余裕の笑みを浮かべた。

兄さんの異能は、本人の意思なく発動しているので本来ならこの異能も効かない。

だが、そんな異能を持つ兄さんの血が流れている為、"意思の無い異能は効かない"らしい。

つまり、不意を突けば私の異能で兄さんを殺せる。

「気を抜くのが早かったね、兄さん」

「ふふ…そうみたいだね。さて…」

変形した地面を横切る時、それに触れて異能を無効化された。

私は立ち上がり、服に付いた埃を払う。

「1本取られてしまったからね、約束を守ってあげよう」

すぐ近くまで歩いてくると、私の頭へ手を置いた。

「はい、終わり」

一撫でして終わってしまった事に、少し寂しく感じる。

そんな私のことを知ってか知らずか、再び兄さんが頭を撫でてきた。

「…へ」

「………明日は無しね」

ぱっと離れるとすぐに扉へ向かった。

「え、明日は無し!?何でですか!」

「さっきので2回目だからね。明日、1本取ったとしても撫でてあげないよ」

それだけ云って出ていった。

「そ、そんな…」

残念な気持ちは増したが、兄さんとの距離は縮まった気がして、褒美は諦められた。

それでも、何故2回も撫でてくれたのか…そんなに明日はしたくなかった?

****

「はぁ…」

扉に背を預けて溜息をする太宰。

先程の自分の行動に恥を隠せないでいる。

「明日は無し…まるで明日の分をしたような言い方だね」

頭を抱えて2度目の溜息を吐いた。

「思わず撫でてしまったなんて…口が裂けても云えないだろうね」

自嘲気味に笑うと、その場を立ち去った。

24.呼び方※少々暴力→←22.初めての訓練



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オタクなめんな - すっごく面白かったです。映画でも見ているよな感じでした。 (2018年8月15日 3時) (レス) id: edf769ece4 (このIDを非表示/違反報告)
入浴(プロフ) - ゆきみだいふくさん» 有難う御座います!喜んで貰えたようでこちらも嬉しいです! (2018年3月26日 19時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきみだいふく(プロフ) - 完結ですね!おめでとうございます!!大好きな太宰さんの色々な面が見られて嬉しかったです! (2018年3月26日 18時) (レス) id: 5f17ef063a (このIDを非表示/違反報告)
入浴(プロフ) - きのさん» 良かったですw私的には成功です! (2018年3月26日 16時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
きの(プロフ) - 泣ける (2018年3月26日 12時) (レス) id: e253f59a3b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:入浴 | 作成日時:2018年2月26日 16時

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