16.現実にただいま ページ18
心の中では気付いていた。
私が発する言葉1つ1つがA自身に突き刺さっていることを。
それでも、何故か口をついて出るのは裏ばかり。
此処は私の心中空間。
そう考えると、現れては消えての繰り返しを起こす2人にも頷ける。
浮かんでは消える中也の言葉。
多くの何かが突き刺さり、痛みに嘆くA。
気付いていた。判っていたんだ。
それでも本音を云えないのは…
ずるずると沈んでいく自分の体を見て、嘲笑う。
滑稽だね…気にするくせに、悪態しか吐かない。
見上げれば私を黙って見下ろしているAの顔が見える。
「本当に笑えるよ…"罪悪感"に呑み込まれるなんてね」
既に胸の辺りまで沈んでしまっている。
きっと"あちらの私"も、もう時期死ぬだろう。
心残り、未練に塗れた人生が閉じる…。
何だ、思っていたより呆気ないね。
もう何も云わずに瞼を下ろした。
「兄さんッ!!」
突然の声に驚き、はっと目を開ける。
扉を激しく叩かれ、怒鳴りつけられたような気分だ。
突如襲いかかってくる頬の痛みに、少しばかり眉を潜めた。
視界に広がったのはあの空間では無かった。
「っ!兄さ…太宰幹部、あの人が…判りますか?」
Aが何かを必死に堪える顔を私に向けていた。
指差した方向には、腕を組んで仁王立ちをし、私を睨みつける中也の姿があった。
「あァ、判るよ。蛞蝓だ」
「なッ!手っ前ェ…!!」
更に睨みを効かせ、今にも飛び掛って来そうな中也を何かが私の視界から遮った。
「具合は?何処か痛い所とか…!」
切羽詰まったような顔で問いただして来る処を見ると、相当焦っているようだ。
「身体中が痛いに決まってるだろう。
おまけに眩暈と吐き気がして最悪だ…」
けれど、目を覚ます事が出来た。
Aが私の頬に平手打ちを御見舞したからだ。
はっきり云って、とても痛かった。
「という事は、薬でも盛られたのか」
「そうみたいだねぇ。全く、君達が遅い所為で身も心もぼろぼろだ」
「来てやっただけでも有難いと思え!」
口端から流れる血を拭い、手の拘束を外す。
少しずつ記憶が戻ってきた為、状況把握が出来た。
私は間諜にされて拷問を受けていた。
まぁ時間からして、そろそろAの意識がもどる頃だろうとは思っていた。
奴等が気付く前に此処から出なければならない。
「さて、早く此処を出るよ」
「おい、目覚めて直ぐに任務に駆り出された実妹に何かねぇのかよ」
あるに決まってるだろ。
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オタクなめんな - すっごく面白かったです。映画でも見ているよな感じでした。 (2018年8月15日 3時) (レス) id: edf769ece4 (このIDを非表示/違反報告)
入浴(プロフ) - ゆきみだいふくさん» 有難う御座います!喜んで貰えたようでこちらも嬉しいです! (2018年3月26日 19時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきみだいふく(プロフ) - 完結ですね!おめでとうございます!!大好きな太宰さんの色々な面が見られて嬉しかったです! (2018年3月26日 18時) (レス) id: 5f17ef063a (このIDを非表示/違反報告)
入浴(プロフ) - きのさん» 良かったですw私的には成功です! (2018年3月26日 16時) (レス) id: d6f7c6ac49 (このIDを非表示/違反報告)
きの(プロフ) - 泣ける (2018年3月26日 12時) (レス) id: e253f59a3b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:入浴 | 作成日時:2018年2月26日 16時