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Act.2《不信感》 ページ3

全てが上手くいって何事もない、はずだった。



『ごめん、一寸此の書類をまとめててくれる?』


と言って、数枚の書類を部下に手渡そうとした。
何時も人懐っこい笑顔を浮かべ、一生懸命な部下だ。


しかし、返事がなかった。


「……………。」

『?どうしたの、気分でも悪い?』


俯いた顔を覗き込むようにして見る。
すると、部下ははっとした様に顔を上げた。

そして困惑した表情を浮かべ、何も言わず走り去って行ってしまった。


『急に、どうしたんだろう……。』


妙な出来事に胸を燻らせながらも、その時は気にせずその場を立ち去った。



しかし、少しずつ気のせいでは済まなくなる。

部下が立ち去った後、同じ様な事が幾度もあった。
話しかけても答えがない。
誰も私をちらりとも見ない。
意識して目を合わそうとすると逸らされる。


明らかな嫌がらせだった。



「Aちゃん、どうかした?」


其れでも、太宰さんは優しく声を掛けてくれる。


『太宰さん…。中々人付き合いが上手くいかなくて。』

「おや。何かあったのかい?」


そう言って、太宰さんは何時もの様に私をソファーへ連れていく。
私の隣に腰かけると、話を聞くよと頭をふわりと撫でてくれた。


『実は、部下たちと上手くいっていないんです。』

「この前まであんなに仲良くしていたじゃないか。」

『はい。上手くいかなくなったのも突然のことで……。』


私が寂しがっているのを察してくれてか、太宰さんは優しく抱き締めてくれた。


「何時も君と仲良くしていた、あの人懐っこい彼も酷かったね。仲が良かった分、つらかっただろう?」


甘い声が耳元で聞こえる。
熱い吐息が耳元にかかる。


「もう大丈夫だから。私が傍に居る。でも、此処で仕事をするのはつらいだろう?」

「君の仕事は事務関係だからね。私の部屋においで。其所で仕事をするといい。」


くらくらと酔った様な頭には、其れが最適の選択に聞こえた。
そして、彼の言葉にこくこくと頷く。

そんな私を見て、太宰さんは満足そうに微笑むと首領に報告してくるから此処で待っていなさいと出ていった。



時計の針が進む音だけが響く執務室。

ふと、ある疑問が頭に浮かんだ。

私はあの人懐っこい部下の話を太宰さんにしていない。
なのに、何故。

太宰さんはあの部下の事を知っていたのだろう。

何故「酷い。」と言えたのだろう。

Act.2.5《独占欲─太宰side─》→←Act.1《疑惑と誘惑》



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ぽむぽむ(プロフ) - 秋葉さん» ありがとうございます!!どちらも読んでいただけて嬉しいです(*´-`)感動です!!! (2018年4月23日 1時) (レス) id: 0ca2e09788 (このIDを非表示/違反報告)
秋葉(プロフ) - どっちのエンドも最高でしたあああ!!すっごく好みでしたー! (2018年4月22日 14時) (レス) id: 5709606bf2 (このIDを非表示/違反報告)
ぽむぽむ(プロフ) - 素敵帽子くんさん» 返信遅くなってしまい、ごめんなさい!!ハマってしまった……なんて嬉しい言葉!!感激です(*´-`)ありがとうございます!! (2018年4月20日 21時) (レス) id: 0ca2e09788 (このIDを非表示/違反報告)
素敵帽子くん - 太宰さん…エr(((殴 ラスト2つあるのに両方とも読んで一人で「はぁぁぁ!!!」ってなってました←変態 ハマってしまいました( 〃▽〃) (2018年4月9日 21時) (レス) id: a991cfb41f (このIDを非表示/違反報告)
ぽむぽむ(プロフ) - 深遊さん» はまってくださった!?すごく感激です!!ありがとうございます!! (2018年4月5日 17時) (レス) id: 0ca2e09788 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぽむぽむ | 作成日時:2018年4月3日 18時

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