同僚のデレがいくら何でも過ぎると思う【文豪ストレイドッグス】 (ページ19)

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58話ページ19

条野side

燁子さんがAさんを落ち着かせてくれたおかげで、立原君の行方について知ることができた。
その真相を知り、慌てて鐵腸さんを呼びに行く。

信じたくない。
信じたくはないが、Aさんが勇気を振り絞って話してくれたことだ。

一連の事件の黒幕は隊長で、探偵社は嵌められたということ。

その隊長を討つべく、立原君は隊長と戦ったこと。

隊長に敗れて、彼は吸血種となってしまったこと。

彼女が一人で抱え込んできたそれはあまりにも残酷で、とても一人では抱えきれない大きなものだった。本当に、何故気づいてやれなかったのだろう。

数分後には、彼女の執務室に隊長と立原君以外の《猟犬》が集まっていた。

「それは本当……なの、か」

『……残念ながら』

Aさんから話を聞いた鐵腸さんは、動揺を隠しきれていなかった。

それだけ、衝撃的な事だった。
誰一人取り乱さず、落ち着いて事実を受け止められているのはさすが《猟犬》と言ったところだろうか。

「さて……これからどうしましょうか」

Aさんは誠実な人だ。
こんなに重い嘘をつくわけがない。だから、隊長が黒幕である事は間違いないだろう。

しかし、証拠がない事には何もできない。

『様子見、がいいかと思います』

Aさんが、いつも通りの声でそう云った。

『吸血種の親玉を潰すせば、きっと元に戻るはず。隊長を討つより、そちらを優先すべきかと。もしくは』

＿＿＿＿＿異能無効化が欲しい。

彼女はそう云った。

『残念ながら太宰さんはムルソーに居るので、叶う願いではありませんが……』

「Aの異能ではできないのか？」

『て、鐵腸さんが真面な事を……！！条野さん、鐵腸さんが真面な事を云うのは月に一度ではなかったんですか！』

「知りませんよそんな事」

そうは云いながらも、彼女がいつもの調子に戻りつつある事が嬉しかった。