54話 ページ15
Aside
”執務室で待ってろ”
そう云われても、落ち着いていることなんて出来なかった。
何だか胸騒ぎがする。
執務室を飛び出して、立原が向かった方へ急いだ。
しばらく走っていると、立原と隊長の声がした。
咄嗟に異能力を使って透明化する。極力、足音はたてないように。
幸いにも、二人は私の存在に気付いていないようだった。
壁に隠れて、様子を伺う。
『______っ!?』
思わず声を出してしまいそうになった。慌てて口を手でふさぐ。
そこには、想像を絶する光景が広がっていた。
隊長は多くの傷を負っている。だけど、どれも大した傷じゃない。致命傷にはならないだろう。
それに対して立原は、
_____目を斬られていた。
目が見えない不自由な状況で、立原は隠し持っていた短刀で隊長に斬りかかろうとした___が。
隊長は、その短刀を容易くかわして、立原の首に刺した。
そして_____立原は、隊長の持っていた上半身だけの人に噛まれた。
隊長の持っていたあれ……資料で見たことある。
上半身だけの体に、そこに刺さった聖十字剣。
"不死公主"ブラム・ストーカー。
異能によって細胞が変異し、《吸血種》へと変容した元人間。
嘗て存在した、"人類を滅ぼす十の厄災"の一つだ。
つまり……
立原がブラムに噛まれたということは、立原も吸血種になるってこと……?
どうすれば……
「……A?」
私が考え込んでいると、立原が私の名前を呼んだ。
『な……んで、』
「はは、やっぱ居る?見えないけどなんか居る気がしたんだよな」
辺りを見回す。
隊長とブラムは、いつの間にかいなくなっていた。
……まさか、立原にバレているとは。
異能を解いて、姿を現した。
『立原?大丈夫なの……?』
「正直大丈夫じゃない。なんか、自分が自分じゃなくなってく感じがする」
立原の歯が徐々に長くなっているのが見える。
よく見れば、歯の先もだんだん尖ってきていた。
「A、俺……ここにAが来てくれて嬉しかった。執務室で待ってろって言ったけど、Aが来てくれなかったら……俺は1人で吸血種になってたと思うから」
『立原……』
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夜半 - 好きです(突然の告白 (12月10日 12時) (レス) @page10 id: 22ab75ff6b (このIDを非表示/違反報告)
いちきちゃん(プロフ) - 滅茶苦茶大好きです (10月16日 19時) (レス) id: bbdd29e3b1 (このIDを非表示/違反報告)
りず(プロフ) - めっっっっちゃすきです (10月4日 0時) (レス) @page4 id: 188b205efb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:tonight | 作成日時:2023年8月26日 12時