佰参:古い記憶 ページ9
実side
いつの頃だったかもう分からない。ただ、父と母が傍に居なかったのは憶えている。
宮城にある大きな屋敷で育った俺は、何時もばあちゃんとじいちゃんに甘やかされていた気がする。
母は俺を産んだ時に病で亡くなり、父は俺をばあちゃん達に預けて失踪したらしい。物心ついた時にそう聞いたことがあった。
それでも寂しくはなかった。ばあちゃんとじいちゃんが優しかったから。
「"お前の名前はね。どんな事も必ず結果が実るようになるという意味があるんだよ。だから色んなことに挑戦しなさい"」
そう言って頭を撫でてくれたじいちゃんはもう居ない。先に俺とばあちゃんを残して天寿を全うした。
その穴を埋めてくれたのが、憂太と里香ちゃんだった。
「"一人なら、一緒に遊ぼう?"」
「"三人で遊んだほうが楽しいよ"」
目の色で虐められていた俺に手を差し伸べてくれた。二人のことは今でも大切で、居なくてはいけない存在だ。
でも、そのまま平和で過ごしたかった気持ちもある。
あの日の光景は忘れない。
血に濡れた地面、呪霊になった幼馴染、黒い箱、泥のような呪霊、そして暗く冷たいあの空間。
長い時の中を暗闇の中で過ごしているような感覚をずっと感じていた気がする。そして気づいたら、生得領域の和室の中に居た。
『俺は親の顔すら知らない。でもこの世界に入ったことで、もしかしたら俺のこの目や呪術師としての素質は親父譲りなんじゃないかって思うんだ。仮にも禪院の出だしな』
俺が話し終えると、3人はふむふむと頷いていた。
「そうか…榎森に呪力があるのは父親譲りかもしれないのか…」
「親に感謝ね。榎森を産んでくれてありがとう」
「お子さんは立派になってます…」
『馬鹿、恥ずかしいだろ。とっとと外行くなら支度しろよ』
立ち上がって自分の部屋に課題を置きに戻る。
俺の後ろで、伏黒が何か考え込むように顔を顰めていたことに、俺は気づかなかった。
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九龍(プロフ) - バナナプリンさん» コメントありがとうございます!現在は更新停止していますが、気が向いたらまた書き始めますので、その時はまたよろしくお願いいたします! (12月29日 22時) (レス) id: 69e5a75295 (このIDを非表示/違反報告)
バナナプリン - 一気に全部読んじゃいました!!オリジナルなのにこんなにしっかりとした深い作品ができるなんて!!すごい今感動しています!! (12月29日 21時) (レス) id: 2d27e83292 (このIDを非表示/違反報告)
九龍 〜くーろん〜(プロフ) - ラエルさん» コメントありがとうございます!頑張って更新しますね!! (5月23日 21時) (レス) id: 30fbc50707 (このIDを非表示/違反報告)
ラエル(プロフ) - 更新楽しみに待ってます (5月23日 17時) (レス) @page29 id: 2dd5f200d4 (このIDを非表示/違反報告)
15 - 一気読みしましたが、めちゃくちゃ刺さりました!乙骨君や伏黒君との関係もしっかり書いてあって凄く面白かったです!男主君のやり取りとか性格、全部好きです!文章力すごすぎです!終わりかたもすっきりしていて選択が出てきたときすごい感動しました! (2022年5月5日 1時) (レス) @page28 id: 62618493d6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2021年1月29日 15時