漆拾肆:一発の弾丸 ページ28
伏黒side
『っ、餓鬼が…っ!!』
威圧感が殺気となって放たれる。五条先生が飄々と躱す中、俺は震える手をグッと握り締めた。
このままじゃアイツはただの呪霊として祓われてしまう。時間は待ってくれない、刻一刻と朝を迎える。
この事態に窓や他の呪術師が気づいたら…?榎森は呪霊として祓われてしまう。その前に早くアイツを戻さないといけねぇってのに、俺は…っ
「(決めただろうが…っ!)」
もう足手纏いにはならない。そう決めただろ…!アイツがこうなることも視野に入れて、今まで付き合ってきたんだろ…っ!!
「…榎森」
影を広げ、中から拳銃を取り出す。あの時榎森から貸してもらった銃だ。
呪力を込めることによって、込められた呪力を倍にして撃ち出す特殊な銃。それを手にして、俺は真っ直ぐ銃口を榎森に向けた。
「……」
祓いたくない。五条先生だって手を抜いて戦っている。それでも榎森に代わる兆しは見えない。どうする、どうすれば…っ
キィンッと耳鳴りがした。
「…!」
何だ今の……
顔を上げると、銃口の先に丁度血塗れの榎森が来る。
"撃て"
「っ…!!」
迷わず引き金を引く。放たれた呪力の弾丸は真っ直ぐ飛び、そして…
榎森の頭を撃ち抜いた。
「…!」
五条先生が驚きで動きを止める前で、榎森がゆっくりと倒れる。ドサリと倒れた身体はピクリとも動かなかった。
「…恵、お前…」
「っ……」
引き金を引いた手が震える。肩で息をしながら、俺はずっと榎森から目を離せないでいた。
『……痛ぇ…っ』
不意に聞こえた声に、ドクリと心臓が跳ねる。頭を押さえてゆっくりと上体を起こした榎森の姿が、制服に変わっていた。
『撃つならもう少し優しく撃ってくれ…』
「……榎森…っ」
ガシガシと頭を掻きながら俺を見る目は、あの綺麗な紫色の瞳だ。戻ってきた、榎森が…
……良かった…
「この馬鹿!遅い!!」
『っ!?痛っ!何するんですか先生!!』
「心配させすぎでしょ!お陰でこっちは危うく祓うところだったんだよ!?」
『知りませんよ!と言うか俺の腕!斬り落さなくてもいいでしょ!!』
「そっちが先にやってきたんでしょーが!僕のせいじゃありませんー!!」
「今はそんなのどうでもいいですから!先に状況説明してください!」
……嗚呼、本当に、心臓に悪い。
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九龍-くーろん-(プロフ) - 日向さん» ありがとうございます!一気に読んで頂けるとは…!とても嬉しいです!更新頑張ります! (2021年1月24日 21時) (レス) id: 50fae09df6 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 初めまして!主人公の設定や周囲との関係、ストーリーなどがとても面白くて1作目から一気に読んでしまいました!応援してます、更新頑張ってください! (2021年1月24日 20時) (レス) id: 0ceab624dc (このIDを非表示/違反報告)
九龍-くーろん-(プロフ) - 南蛮モナカさん» ありがとうございます!とても嬉しいです…!今後とも主人公達の道を見守って頂けると嬉しいです!更新頑張ります! (2021年1月23日 0時) (レス) id: 50fae09df6 (このIDを非表示/違反報告)
南蛮モナカ - 設定とかキャラ達の関係性?とか話の進み方とかすっごく好みです!更新がんばってください! (2021年1月22日 23時) (レス) id: 4ea39a9195 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2021年1月21日 17時