陸拾捌:連れ戻す ページ22
五条side
邪視の討伐から皆が帰ってきて、大体一週間が経ったその夜…
不意に感じた呪力に、僕は目を覚ました。
時計を見れば深夜2時過ぎ。普通ならこのまま二度寝するけど、今回ばかりはちょっと違った。
「(突然出てきたな…)」
高専の外からか?視界に浮かぶどす黒い呪力が炎のように揺れ動くのが見える。まるでいろんな色が混ざって黒くなったようなその呪力は、高専からゆっくりと離れているように見えた。
その呪力の形に、僕は見覚えがあった。
「…ちょーっとまずいな」
急いでベッドから抜け出し、着替えて高専を出る。少し早足で道路を歩いていくと、それは見えた。
車一台分しかない緩やかなカーブの道路。そこをドロドロした黒い何かが歩いていた。真っ白なフードとウチの制服が辛うじて見える。
「こんな夜更けに散歩?」
声をかける。黒くドロドロしたそれは動きを止めると、ゆっくりと僕の方に振り返った。
【せ、ゼんせ゛ェ、え゛?】
耳障りな声が泥と一緒に吐き出される。真っ白なフードの中には、真っ黒な泥が詰め込まれていた。
真っ黒な泥に赤い目玉が上下ばらばらにくっつき、鋭い牙をもつ巨大な口が顔を半分に割るように縦にくっついている。失敗した福笑いみたいな顔だ。手足も人のものじゃない、ドロドロと流れる真っ黒い泥になってしまっている。
「起きたなら声の一つでもかけてよ。冷たいなぁ」
ポケットに手を入れたまま近づくと、ソレはゴポリと音を立てて口から泥を吐き出した。モゾモゾと動く泥は次第に大きく膨れ上がり、ムカデのような呪霊に変化する。
コトリバコの術式だなこれ。ということはマジであのドロドロは実ってことか…
【お、お゛ォ鬼ごっ、ゴゴご゛、ご、ごっこ、ォ゛、じま、し゛ョ?】
ニヤリと笑うように目が三日月に細められた途端、ムカデのような呪霊が奇声をあげて僕に飛び込んできた。鋭く大きな二本の顎が開かれ、僕の胴体を真っ二つにしようと狙ってくる。
でもねぇ、僕には効かないんだよね。
「悪いけど、今の実とはしたくないなぁ。ていうか、」
右手だけ出して、跳んできたムカデの眉間を軽く打つ。それだけでムカデの呪霊は簡単に地面にめり込んだ。
「君、誰?」
お前みたいなヤツが気安く実の真似してんじゃねぇよ。殺すぞ。
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九龍-くーろん-(プロフ) - 日向さん» ありがとうございます!一気に読んで頂けるとは…!とても嬉しいです!更新頑張ります! (2021年1月24日 21時) (レス) id: 50fae09df6 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 初めまして!主人公の設定や周囲との関係、ストーリーなどがとても面白くて1作目から一気に読んでしまいました!応援してます、更新頑張ってください! (2021年1月24日 20時) (レス) id: 0ceab624dc (このIDを非表示/違反報告)
九龍-くーろん-(プロフ) - 南蛮モナカさん» ありがとうございます!とても嬉しいです…!今後とも主人公達の道を見守って頂けると嬉しいです!更新頑張ります! (2021年1月23日 0時) (レス) id: 50fae09df6 (このIDを非表示/違反報告)
南蛮モナカ - 設定とかキャラ達の関係性?とか話の進み方とかすっごく好みです!更新がんばってください! (2021年1月22日 23時) (レス) id: 4ea39a9195 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2021年1月21日 17時