伍拾玖:苦渋の決断 ページ13
虎杖side
霞む視界の中いっぱいに、真っ青な色が映し出された。
頭が凄ぇ痛い…正直言うと、意識飛びそう…でもさ…っ
「(ここでヘバったら、皆死ぬ…!)」
青は駄目だ。さっきみたいにバコバコ穴開けられる…!
身体に力を入れ立ち上がる。痛む頭を数度振って、視界を明瞭にした。
飛び込んできたのは、邪視の体中に浮かび上がった無数の目だ。それが四方八方に視線を飛ばし、いくつかは俺を視界に捉えていた。
「やっ…」
やばい。咄嗟に身を隠した途端、真っ青な瞳に浮かぶ瞳孔が細められた。
破壊音が溢れていく。周囲の木に巨大な穴が開いて倒れていく。穴が開いた岩は粉砕され、夥しい量の木の葉が散った。
「〜っ!!」
左脇腹に激痛が走った。あの円形の攻撃が掠ったんだ…っ!
ドクドクと血が流れる。滑らかな曲線を描いて消失した脇腹から溢れた血が、黒い制服を濡らしていく。
俺は痛みを必死で堪えながら、木陰から邪視の居た方向を見た。
真っ赤だ。辺り一面血の色になっていた。
伏黒達が隠れていた岩が真っ赤に濡れ、ポタポタと血が滴り落ちている。複数の円を描いて抉り取られた岩の先に、
「……榎、森……?」
真っ赤に染まった白いフード。伏黒を庇うようにして見えた身体には大小様々な円が空き、切断面から赤い液体が滴り落ちる。その身体が小さく震えると、『げふっ』と濁った咳と共に、大量の血が口から零れ落ちた。
『……大丈夫、か…?伏黒……』
声が聞こえる。弱々しい声が耳を打つ。俺はその場で固まったように、その背中を凝視していた。
呼吸が冷える。身体の芯から凍り付いていく。指先が、足が、拒むように震え始めた。
「え、榎森…っ」
『…良かった…。怪我は、無い…みたい、だ…』
ブシャッ
擬音が飛び出しそうなほど、唐突だった。
榎森の胸が円状に抉り取られる。伏黒の顔に血が降り注ぐと同時に、ゆっくりと榎森は前に倒れた。
伏黒にもたれかかるようにして倒れた榎森はピクリとも動かない。ただただ溢れる赤が、伏黒の服を汚していく。
「……あ……ぁ…………っ」
冷えていく。全身が氷のように冷え切った瞬間、煮えたぎるような怒りが湧き上がった。
「う゛あぁああ゛ぁああああ゛ぁ゛あああ゛ぁっ!!!!!!!」
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九龍-くーろん-(プロフ) - 日向さん» ありがとうございます!一気に読んで頂けるとは…!とても嬉しいです!更新頑張ります! (2021年1月24日 21時) (レス) id: 50fae09df6 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 初めまして!主人公の設定や周囲との関係、ストーリーなどがとても面白くて1作目から一気に読んでしまいました!応援してます、更新頑張ってください! (2021年1月24日 20時) (レス) id: 0ceab624dc (このIDを非表示/違反報告)
九龍-くーろん-(プロフ) - 南蛮モナカさん» ありがとうございます!とても嬉しいです…!今後とも主人公達の道を見守って頂けると嬉しいです!更新頑張ります! (2021年1月23日 0時) (レス) id: 50fae09df6 (このIDを非表示/違反報告)
南蛮モナカ - 設定とかキャラ達の関係性?とか話の進み方とかすっごく好みです!更新がんばってください! (2021年1月22日 23時) (レス) id: 4ea39a9195 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2021年1月21日 17時