鬼の名を持つ副隊長《2》

夜の邂逅 ページ42

総鬼side

結局決闘は明日行われる事になり、何故か俺も参加する事になった。旦那曰く「テメーも闘って、俺に負けたらその物騒な刀捨てろ！」らしい。物騒か？
確かにコイツは天人ですぜ？でも皆が言うような魂喰いの妖刀だろうと、俺はコイツを気に入ってるし、コイツも離れる気は無ぇからなァ…。

『明日ねェ…』

見廻りに行った総悟の部屋で一人、刀の手入れをしつつ呟く。既に暗くなったってのに、総悟はこんな時間まで巡回だと。

【沖田君、僕達勝てるよね？】
『あ？勝てるに決まってんだろ。俺とお前が揃えば最強ってやつだ』

総悟から貰った大切な刀なんだ。絶対折らせねェ。手放さない為にも、悪ィが旦那には負けてもらわねぇとな。

【沖田君が勝てるように僕も頑張るよ！あんな木刀ぱくっと食べてやる！】

張り切ってンなァコイツ。でも食べるってどういう事だ？
とりあえず、食べる勢いで折りに行くって事だろうなと勝手に解釈した。

『総悟の後とは言え、俺も旦那とサシで勝負したかったな』
【え〜…？止めておいた方が良いよ沖田君。あの人も修羅場慣れしてる身体してたし】
『いや、強いなら挑みてェ。弱い奴虐めるより強い奴虐めた方が愉しいからな』
【もう、沖田君格好いいなァ。僕も付き合うよ】

何処となく笑っているような声に俺も笑みを零す。でもあの時の旦那の動きは予測出来なかったな…。突然だったとは言え対応遅れたし、もし真正面から挑んでいれば…そう考えるとゾクリとする。
明日まで昂ぶりは抑えとかねぇといけねぇってのに…。道場に行って気分転換するか…？

「お、手入れしてんのかィ」
『総悟』

考え事をしている最中に総悟が帰って来ていた。総悟は上着を脱いで、そのまま俺の隣に座る。
その腰に添えられた刀を見た時、持っていたマガツキが震えた。

『お、おいマガツキ…』
【ごめん沖田君。でも…】
「お、気づいたか。これだろ？反応してんのは」

腰元の刀を抜いて机の上に置く総悟。置かれた刀は、マガツキと瓜二つの刀だった。まさか…

【マガナギ兄さん…！】
【マガツキ…！？貴様、何故此処にっ】
【それはこっちの台詞だよ！何で兄さんが…】
「どうしても使って欲しいって駄々捏ねられたんで、持って来ただけでさァ。あ、紹介するぜィ。コイツは沖田総鬼。俺の恋人だ」
『ふざけるな総悟。俺は恋人じゃなくてお前の隊の副隊長だ』

一緒に居る事は多いが、恋人になった覚えは無ェ。ジト目で睨みつつ、俺は手元の二振りを見た。

決戦前夜→←目には目、刀には刀みたいな感じ

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