鬼の名を持つ副隊長《2》

変な気分 ページ27

総鬼side

総悟から刀を貰った翌日、俺は新しい刀を提げて街中のパトロールをしていた。
真っ黒でとても綺麗な刀だ。さっき鍛冶屋に行ってみたが、そこに売ってあるどの刀よりも綺麗だった。

『総悟もたまには良いモン寄越しやがるなァ…』

俺だけの刀だ。柄を優しく撫でて微笑む。でも今日はそんな総悟が珍しく部屋に居なかった。どうやら、俺が帰る前に捕まえた辻斬りの野郎の事情聴取だとかそんなので…


「ヒィイッ！？」


突然の叫び声に、咄嗟に刀に手をかけて振り返る。そこには俺…いや、総悟より少し年上の上質な着物を着た背の高い男が、腰を抜かすようにして座り込んでいた。

「そ、その刀…っ、その刀は…！」
『…？』

俺の刀を見てビビッたのか……？

『アンタ、どうし「嫌だぁああぁっ！また人が死ぬっ、食われるんだぁああぁっ！」ちょっ、落ち着きなせェ！』

往来で物騒な事言うな！叫ぶな！！
慌てて駆け寄り、その男を取り押さえる。落ち着けと何度も言うが、一向にその男は喚き散らしたまま落ち着かねェ。
周囲の人々が、奇異の目で俺と男を見てくる。

『(だーっ！こうなったらちょいと一発入れて…っ)』

意識失わせるしかねぇと思って、手刀を打ち込もうと手を挙げた時、


『ちょっと黙りなよ、ねぇ。黙らないと…斬るよ？』


…あれ、俺今…。

「っ……」

気がつけば、あれだけ喚いていた男は顔を真っ青にして黙り込んでいた。
俺はその男をひとまず落ち着かせ、家に帰るように伝えて帰らせる。周囲の人々は事態の収束につれて、少しずつその場から立ち去っていった。

『…？』

何だったんだ？今一瞬、意識が途切れたような……。

『変な気分だ』

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