🍎嗚呼、煮詰まるような痛みだ ページ35
アップルside
何だ、この気持ちは。何だ、この熱は。
繋がれた手から伝わる熱も、足で駆けて弾む息遣いも全てが熱く体を駆け巡る。まるで毒林檎として生み出される前、鍋の中で煮詰められている時のような息苦しい熱。
『アップルは何処か行きたい所ある？』
そう尋ねるエースは眩しくて、キラキラ光るその姿に言葉が詰まってしまう。はく、と動く口からは何も出なくて、更に焦って思考がぐるぐると回った。
「あ、林檎。もしかして…」
何だ、ジャックのニヤついた顔から出た言葉は、
「惚れ直しちゃった？」
自分の気持ちを的確に表した言葉だった。
「惚れ、直した…？」
「そ。エースがあまりにも魅力的で惚れ直しちゃったんでしょ〜！」
ズイッと背中を押されて私の前に出たエースは『ちょっとジャック！』と慌てる。近づいた顔は黒いアイラインの中に私と同じ青が混じっていたり、林檎のチャームが胸元で輝いていたりして、このトランプ兵の中に私の要素があるのかと思うだけで、胸がドクドクと高鳴った。
「うっわ！？林檎顔赤っ！？」
「な…っ」
し、仕方ないだろう！私だってこの熱の冷まし方が分からないんだ！
『…っへへ、嬉しい』
へにゃりと笑う顔を見た途端、思わず抱き締めてしまった。ど、どうしたんだ私は。何故こんな序盤で…っ
「あー！クソ林檎だけずるい！僕もぎゅーってしたい！！」
『んふふ、アップル可愛い…♪すっごいドキドキ言ってるじゃん』
「う、煩いっ！」
私より背が低いからすっぽりと覆えてしまう……。いつもと違うベージュのコートの中で蕩けたように笑うエースの顔が、こんなにも愛おしい。
「…っ、と、とりあえずアトラクションにでも乗ろう。どうせ暫く待つんだ、早めに並んだ方がいいだろう」
いけない。今日は普段より紳士らしく振る舞わねばと心がけていたのに…！
コートの中から解放してやれば、エースはすぐジャックに抱きつかれていた。私も衝動的にしてしまったから許してやろう。
「エースはどこ行きたい？」
『ハニーハント！』
「可愛いな」
意外と可愛らしいものを提案するエースの手を握りながら、ハニーハントのある場所まで歩いていった。
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作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2022年10月20日 0時
