❤なんか様子がおかしい気がする ページ14
ジャックside
時計の針が8時を示して数分。廊下から聞こえてきた足音2つがドアの前まで来て、ガチャリとドアがゆっくり開かれた。
『ごめん、遅くなった』
「も〜!遅いぞ2人共ー!」
「やぁエース、と毒林檎」
やっと2人が帰ってきた。もう、待ちすぎて危うく時間を忘れるところだったよ!
「また1からここまで作り上げたのか…」
「そうだぞ!今度は僕もお手伝いしたんだ!」
えっへん!と胸を張る親友に「よく頑張ったな親友〜」なんて頭を撫でてやると、嬉しそうに親友は笑う。そんな僕達をよそに、エースと毒林檎はまじまじとタワーを見て感心してるみたいだった。
『僕とやった時も地獄のような時間だったのに……凄いな……』
「………で、仕上げを私にやらせようと言うのか、この完璧なタワーの」
「そ!言っとくけど崩したら分かってるよな?」
ここまで作るの大変なんだからな。それを踏まえて挑めよ林檎!
最後の2枚になるトランプを毒林檎に渡す。林檎は少し緊張した面持ちでタワーの前に立つと、早速タワー作りに取り掛かった。
僕的には崩してくれた方が面白いんだけどなぁ〜!毒林檎の絶望顔が見たい!……って、あれ?
何だかエースの様子がおかしい。愉快な毒林檎や応援する親友すら見ずに、自分の口に手を添えて何か思い詰めたように床に視線を落としてる。……何かあったのかな。
「どうしたのエース」
『…!いや、何でもない。考え事してたんだ』
そう言って見えた笑顔は何だかすごくぎこちなかった。まるで作り笑いだ。
「……ほんと?」
問いかけると、エースは少しだけ顔を曇らせて黙っちゃった。何かあったのかな、曇り顔のエースなんて僕見たくな………、…………林檎の匂いがする。
「エース」
腕を掴んで引き寄せる。驚いた顔で僕の懐に来たエースの顔を両手で挟んで僕の方に向けさせれば、唇から微かに甘い林檎の香りがした。
『な、何?ジャック…』
「………」
何で林檎の匂いがするんだ。しかも唇から。もしかして………
「……ムカつく」
『へ?』
僕のエースからこんな匂いがするなんて、考えただけで腹立ってきた。
「わ!凄い凄い!ジャックー!エースー!林檎がやりきった、ぞ…………」
「どうだ、私でも出来………」
気がついたら体が動いていた。僕はエースの頬に手を添えて、その香りを上書きするように。
優しく、その唇にキスをした。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2022年10月20日 0時