影法師に閉じ込めて・弐 (ページ8)

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伍拾陸＊呪われた日ページ8

伏黒side

子供の玩具が散乱する部屋の中に、俺は立っていた。
近くのカレンダーを見ると、6年前に日付が変わっていた。此処も実の記憶の中なんだろう。
それにしても、何で俺は記憶の中に居るんだ…？この記憶を眺めることで、この場所から出る解決策が分かるって言うのか…？

「ねぇアナタ、あの子、喜んでくれるかしら」

隣の部屋から声がした。子供部屋のドアをすり抜けて廊下に出ると、リビングの方から男女の声が聞こえる。
どうやらさっき居た男と、妻であろう女性が話しているみたいだ。俺がリビングに向かうと、そこには部屋の中を一生懸命飾りつける二人の姿が見えた。

「ばーか、喜ぶに決まってんだろ。アイツはこういうサプライズ大好きだって知ってるだろ？」
「ふふっ、そうね。でもまさかケーキが被っちゃうなんて思わなかったわ」
「そ、それはまぁ……サプライズだ」
「うふふっ、アナタったら可愛いんだから」

微笑ましい光景だ。手作りの飾りが机の上に散乱していて、どれも不器用ながらも一生懸命作ったのが感じ取れる。
実は…居ないのか。それもそうか、サプライズだから居ない時にこういうのはやるよな。

「あ、困ったわ…。食材切れちゃってる…」
「俺が買ってきてやるよ。金よこせ」
「もう、言い方！でも、よろしくお願いします」

財布を渡された男が部屋を出て行く。どうやらこの飾りつけは実の誕生日パーティーのためのものらしく、かけられた幕には「"お誕生日おめでとう"」と文字が書かれていた。

「さ、ご飯作りましょ！」

エプロンをつけて意気込む女性…実の母親は、慣れた手つきで料理を始める。…長い黒髪に、華奢な体型、まるで…

「…津美紀……」

今は起きない俺の姉の名を呟く。と、玄関の方からチャイムが聞こえた。

「あら？何かしら…」

実の母は一旦手を止めて玄関へと向かう。暫くすると、小さな箱を持って戻ってきた。

「これ、おばあちゃんのよね…？何で此処に？」

…ドクリと胸が跳ねる。知っていても、分かっていても、止めることが出来ない。これは"記憶"なのだから。
彼女が"仕掛け"を解いていく。カチャカチャと音が鳴る中、周囲が暗く淀んでいく。そして、

蓋が、開いてしまった。