影法師に閉じ込めて・弐 (ページ3)

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伍拾壱＊調べる事ページ3

実side

『…寝たか……』

すやすやと寝息を立てる恵の姿を見て、ほっと息を吐く。何とか寝てくれたな…
そっと恵を縁側に寝かせ、頭が痛くならないようにざぶとんを引き寄せて枕代わりに敷いてから、俺は立ち上がった。気になることがあったからだ。

一つは薪割りの合間に見えた鳥の視界だ。俺の見間違いではなく、しっかりと真っ赤に染まった地面が映し出されていた。あの場所に何かあるのは間違いない。
そしてもう一つは…

『婆ちゃん、何してんの』

ウチの婆ちゃん。
台所に行くと、婆ちゃんはお酒と少しの米、果物を立派な盆に乗せていた。

「いやぁ、裏の雑木林で犬の死体が出たって言ってたからねぇ。犬神様にちゃんと連れてってもらえるようにお祈りしようと思ってねぇ」
『犬神様って…もしかして雑木林にある祠の…？』
「そうさね。もしかして、今日行って来たのかい…？」
『あー……まぁね。気になったから…』

ちょっとはぐらかして言ったが、婆ちゃんは「そうかいそうかい」と穏やかな笑顔で数回頷き、小さな数珠を手にしたまま盆の上に乗ったお供え物を眺めた。

「犬神様はねぇ、昔この村を守ってくださった大きな山犬様なんだよ。この村の守り神さね。今じゃあ年寄りばかりが覚えてるだけで、若いモンは一人も行かないもんだから、いつしか忘れられちまってねぇ…。実ちゃん達が来てくれて、きっと犬神様も喜んでるだろうねぇ」
『…そうだといいな』

犬神様…か。神への畏怖、信仰は時に呪いを生むが…流石に善いものとして祀られている神が呪いに転じることはないか。じゃあ、また別の…

「それに比べて涼作は…全く、村のもんは恩を忘れちまうモンが多くて困るさね。死んだのも仕方ないかもねぇ」
『…！』

不意にこぼした婆ちゃんの言葉に、俺は何か引っかかって何があったのか問いかけた。すると、婆ちゃんは少し前にあった事件の話をしてくれた。

「いつかも忘れちまったがね、この辺りに若い夫婦が住んでた頃さぁ。ちょいと乱暴な夫婦を村から追い出そうと村のもんが結託してね、ある儀式を行ったんだよ」