散らばる星はその地で輝く -9-【短編集】

《リクエスト》愛らしい君の耳元に触れたら -6-【放浪者】 ページ40

スカラマシュside

「触らせろ」
『嫌だって言ってるだろ……！』

ぐぐぐっと力を込めた腕が押し戻される。目の前で嫌がるこの生意気な人形は、僕の願いを聞く気がないらしい。

「別に良いじゃないか。君のピアスが取れたから付けてやろうとしてるだけなのに」
『自分でつけるって言ってるじゃないか…！いいからピアスだけ寄越して離れろ！』
「嫌だね。どうして僕が君の言う事を聞かなくちゃいけないんだい？」

僕は親切で拾ってやったんだ。どうするかも僕次第だろ？

「ほら、駄々を捏ねる暇があるなら大人しく耳を出しなよ。暴れたら痛い思いをするのは君だろ？」

あ、黙った。ぐっと言葉を飲み込んで睨むその顔、反抗的でとっても好きだよ？

『意地悪……っ』
「意地悪くしてるんだよ。観念する事だね」

追撃してやればツヴェートは溜息をついて僕の腕を掴む手を降ろした。よしよし、素直で本当に助かるよ。

『付け方知ってるの？』
「知ってるよそのぐらい。僕を馬鹿にしてるのか君は」

拠点にしてるテントの中は酷く冷え切っている。手にしたピアスの金具でさえ氷のように冷え切っていて、人間だったら凍傷するだろうななんて思いながら、彼の髪を耳にかけてピアスの穴が空いている耳を出してやった。

「動くんじゃないぞ」

椅子に座る彼に近寄って、そっと耳に触れる。そうしたら、

『ふ、ぅ……っ』

なんて甘ったるい声が、耳元で思いっきり聞こえた。

「………あのさぁ…」
『な、んだよ……っ』
「耳弱い癖にピアスなんかするんじゃないよ」
『弱い訳じゃない！ただちょっと人に触られ慣れてないだけで……っ』
「へぇ〜？そうなんだぁ」

良いこと聞いたなぁ〜？そっかぁ、触れられ慣れてないんだね？

『ちょ、ちょっと、何だよその顔、ひ…っ！？』

耳たぶを撫でて軽く押してやって、その後縁をなぞるように耳を指先でツツーっとなぞるだけで、ツヴェートは顔を真赤にしてフルフルと震える。
人形の癖にいっちょ前に感覚があるなんてね。ほんと博士の実験は末恐ろしいよ。

『っ、スカラマシュ……！』
「っはは、かーわいー……♪」

ま、そんな人形に惚れた僕もどうかしてるけど。

「そう怒るなって。ちゃんとやってあげるからさ」

でもそうだなぁ。次はベッドに押し倒して聞いてやろうかな。
君がそうやって甘く鳴く姿を、僕の前に晒してご覧よ。



orchid〜オーキッド〜様、リクエストありがとうございました！

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