無邪気な奴程恐ろしい ページ7
沖田(マガナギ)side
それは突然だった。
マガツキが自身の器に刃を突き立てた途端、俺の身を猛烈な殺気が襲った。
その殺気に身が怯む。刀身を伝う血がマガツキに吸収される間、次第にその瞳が紫からどす黒い赤へと変じていった。
「アイツ、何を…!?」
背後に居た銀髪の男から驚愕の声が漏れた。俺は眼前のマガツキを警戒しながら見つめる。
「(器の血で自身を強化する気か…そうはさせん…!)」
限界まで足に力を溜め、一気に走る。今の器であれば奴の前に一瞬で迫れるだろう。そして刀を吹き飛ばせばいい。それで、終わりだ…!!
マガツキがゆっくりと胸から自身を引きずり出す。その合間に目の前まで来ては、剣を振り上げた。
剣が吹き飛ぶ事は無かった。振り上げた刃は途中で白く細い手に止められる。そして、抜き取られた刃が俺の肩に深々と突き刺さっていた。
何故…何故だ…!?何故斬ろうとした筈の俺が、斬られている…!?
『……ははっ』
笑い声。俯いて肩を微かに震わせながら、目の前のソイツは笑っていた。
俺の肩に突き刺した刃を引き抜き、血が溢れる手も気にせずに刀を引っ張る。おかげでソイツの方へと体が傾いた。
視線が交わった瞬間、刃から離れた手に顔面を掴まれ、容赦無く地面に叩きつけられた。
地面が陥没する音が聞こえたが、それ以上に耳鳴りと激痛が襲った。顔に食い込む指の隙間から、狂ったように笑う獣の笑みが見える。
見えなかった。迫る速度もこのいとも簡単に頭蓋を砕かんとする力も、予想外だ…ッ!
「この…っ、離『っは…はは、はははははははははははははっ!!!!!』
狂喜の声。掴まれた頭が再度持ち上げられ、叩きつけられる。
痛みが頭を支配する。何度も何度も、玩具で遊ぶ子供のような無邪気な鬼が、俺の器の頭部を壊しにかかっていた。ビシャリと飛び散った血がヤツの顔にかかり、目の前の鬼はうっとりと目を細める。…嗚呼、そんな笑顔をする種族を、俺は知っている。
まさか…あの宇宙最強と言われた…
"テメーにゃ扱いきれねぇよ"
そんな声が聞こえた気がした。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年5月24日 2時