僕だけが知ってる強さ ページ6
総鬼(マガツキ)side
下から向かってきた刃を受け止める。金属の擦れる音と一緒に衝撃が走り、腕までビリビリと痺れた。でも、兄さんを受け止めた僕の体はビクともしない。沖田君の力が強いんだ。
『…勝負だ、兄さん』
目の前の紫の瞳に真っ直ぐ宣言する。そのまま剣を捨てさせるように横へと流し、即座に回し蹴りを放った。
ドッ、と肉を打つ鈍い音と共に、脇腹に命中した足が兄さんの器を吹き飛ばす。数回地面を転がった兄さんは、その場で激しく咳き込んだ。
軽く蹴りを入れただけでこの威力………凄い…!
「っ…マガツキィ……っ!」
殺気を放った兄さんが飛び込んでくる。さっきより速い…っ!すかさず剣を打ち込むも、僕より早く兄さんが縦横無尽に刃を振るった。
風の音と熱い鉄の気配が襲い掛かる。僕は兄さんの撃ち出す剣の軌道を目視で避け、同じく斬りかかった。
無数の斬撃がぶつかり合い火花を散らしていく中で、少しずつ沖田君の体に傷が走っていく。
『(さっきより格段と違う…!まだこんなに力があったの…!?)』
これじゃあ負ける。頬が裂け、腕から血が噴き出し、足に激痛が走る。捌き切れなかった刃が徐々に沖田君の体に飛来し始めた。
「俺より劣る貴様に、その器は勿体無い!!俺が貴様より上手く乗りこなして見せよう!」
叫びと共に放たれた横薙ぎの一閃。前から鉛がぶつかってきたような衝撃を受け、僕は後ろへと飛ばされた。
地面を足が削って土埃を立てる中、真一文字に斬られた胸から鮮血が零れる。痛い…っ、身体中痛みだらけで、おかしくなりそうだ…っ
「……退け、愚弟よ…!」
来る、目の前から渾身の一撃が。
低い体勢で居合の姿勢を取る兄さんから、止めを刺すとばかりに気迫が溢れる。アレを受け止めたら僕は喰われて死ぬ。でも阻まないと、沖田君が…っ
『(………やるしかない)』
沖田君の奥底にある、危うい力。それで迎え撃つしかない。でも、きっとそれを起こしたら僕は消えるだろう。
『…嫌だね』
兄さんに勝てるなら、いいや。僕は笑って、胸に刃を突き立てた。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年5月24日 2時