吹っ切れた奴程、強いものは無い ページ45
総鬼side
隊服に着替え、上着を腰に巻きつけ、スカーフを締める。
今日はアイツを捕らえる日だ。元に戻る為にも、捕まえないといけねェ。
「…俺なら出来る」
昨日は弱気になった。でも、もう大丈夫でィ。
俺は夜兎の力が無くたって、出来る。夜兎だから拾われた訳じゃ無ェ。影族だから拾われた訳じゃねェ。
俺だから、此処の皆は置いてくれる。信頼してくれる。きっと、そうなんだ。
「(そうじゃなかったら、俺はとっくに捨てられてらァ)」
部屋の戸を開く。一歩前に出れば、目の前に並ぶ隊士に向かって、声を張り上げた。
「まず初めに…お前等には迷惑をかける!俺の失態の尻拭いをさせる事になる!…が、俺はお前等が居ねぇと、駄目だ」
一人一人の顔を見る。どの隊士も、真っ直ぐ俺を見ていた。
「だから…今日は、宜しく頼む」
「勿論です副隊長!」「隊長捕まえるのは任せてください!」
「山崎になっても副隊長は副隊長だよなぁ」「もうこのままでも良くね?」
『いや俺が困るから!この顔面でミントン出来ないからっ!!』
笑いが起こる。その和やかな雰囲気に、俺はちょっとだけ吹き出してしまった。
「たくっ…このままだと俺も困らァ。だから、見つけ次第お縄にして俺の前に連れて来い!野郎の首は俺が獲る!」
「「殺しちゃ駄目です副隊長っ!!」」
「あ、そっか。まァいい、つー訳で行けお前等!」
「「はっ!」」
散り散りになって走っていく隊士を見送り、俺は山崎の方へ行く。
「…今日は頼む」
『任せてください。大体の行き場所は把握してますから』
"隊士にも伝えました"との言葉に笑みを零す。俺は山崎の肩を叩いてから、屯所を出た。
人の多い中を歩いて行く。出来るだけ重々しい空気を出さぬようにと、徹底して見廻り時と同じ雰囲気で歩いていく。
「(アイツは、俺を狙ってくる筈だ。手分けして探させているが…)」
果たして食いつくだろうか?あの時は偶然傍に居たから来たのかも知れねェ。
もしそうだとしたら、別の処で見つかる可能性も…
『副隊長…っ』
山崎が声を漏らす。その険しい顔の先には…
見慣れた番傘が、目に入った。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年5月24日 2時