確かめねぇといけねェ ページ43
総鬼side
屯所に戻った俺は、今土方さんに呼び出され土方さんの部屋に来ていた。
「ま、そう言う事で厄介な事になりやした」
「お前…魔王に何てモン付与してんだ…そんな礼装要らねぇよ」
「俺だって好き好んであのバーサーカーに無敵礼装付与した訳じゃねーです」
きっと、後から合流しようと追いかけていたんだろう。
其処に運悪く俺が事故り…俺の半分が総悟の中に入ったってところか。
「…捕らえられそうか?」
「…」
土方さんの問いに、俺は俯く。捕らえる…か…
「(今の俺じゃ、無理だ)」
今の総悟を支配してるのは夜兎としての俺…「綾斗」と言う名前だった頃の俺だ。
今の俺も夜兎の身体能力を駆使している心算だが、記憶が無くなる前の俺は今の俺より強いだろう。
それに…
「…アイツァ…捕らえても俺の処には戻らねぇと思いやす」
忘れるな。そう、アイツは…俺が夜兎としての自分を捨てて進む事を望んでいない。「
それは何処か、俺が真選組で居る事を拒んでいるような響きに聞こえた。
「(アイツは、
夜兎の俺は…確かに俺を助けてきた。マガナギの時も、春雨に攫われた時も、あの怪力と回復力に救われた。
でも、それと同時に俺の大切なものも壊してきた。総悟に怪我を負わせ、真選組に迷惑をかけた。
俺は…自分が嫌いな訳じゃ無ェ。でも、この力に何時か呑まれる気がして、信用出来なかった。
「…何シケた面してんだよ」
土方さんの声が、変に澄んで聞こえた。俺は顔を上げる。
土方さんは、俺を真っ直ぐ見つめていた。鋭い青の瞳が、何処までも見透かすように俺を射抜く。
「見てりゃあ険しい顔しやがって…。俺にはその"忘れるな"って言葉、否定じゃなく懇願に聞こえるがな」
「懇願…?」
アイツが、俺に…?
「"忘れるな"…。そりゃきっと、お前が「沖田総鬼」として生きていくのを否定する言葉じゃなく、例え本来の名を、姿を捨てても、嘗てお前を守った者も、自分と言う道も忘れるなよっつー響きに聞こえるぜ」
土方さんはそう言って、煙を吐き出す。ゆらりと揺れる煙越しに、土方さんの笑う顔が見えた。
「お前は誰にでも成れる。だからこそ、"お前"と言う人間が消えていくんじゃねぇかって心配してんだよ、アイツは」
「…そう、だといいですねィ…」
俺はただ、拳を固く握るだけだった。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年5月24日 2時