超えるべきは ページ42
総鬼side
「テメー、何人の持ち物盗み出してんだ」
警戒を含みつつ、目の前の総悟に声をかける。
総悟は何も喋らずに、ただ俺の方へ番傘を向けた。その先端から硝煙と火薬の臭いが火を噴く。
俺目掛けて撃ち込まれた弾丸を、俺は刀一本で振り捌いた。
山崎の身体だからちょいと速度は落ちるが…それでも弾丸全てを斬り落とし、怪我一つ無く銃弾の雨を振り払う。
上から影が落ちた。俺は頭上目掛けて一切確認せずに剣を振り上げる。体重を乗せて番傘を叩き込んだ総悟を、俺は振り飛ばすように薙いだ。
飛ばされても総悟は動じずに着地する。チッ…何時もより反応良いなコイツ…
「…忘れるな」
「は…?」
「忘れるな。俺を忘れて生きようだなんて、許さない」
爛々と輝く赤が、俺を射る。その視線を真正面から受け取りながら、顔を顰めた。
コイツ…まさか…
「テメーは…『副隊長!!』…!」
山崎…!?振り返った途端、俺の顔スレスレに弾丸が飛ぶ。
山崎の放ったバズーカは俺の横を通り過ぎ、総悟目掛けて突っ込み爆発した。
辺りに散らばる砂埃と瓦礫の破片から目を守るように腕を翳す。煙が収まった処には…総悟はもう居なかった。
『大丈夫ですか!?』
「テメー、人に向かって物騒なモン撃つんじゃねェ」
『痛っ!?いや、アンタも何時も撃ってるでしょーが!』
俺じゃねぇし、総悟がよく撃つだけだし、俺は二発しか撃ってねぇし。
「たくっ…お蔭で逃がしちまったじゃねーか」
『結局誰だったんです?副隊長の魂持ち逃げした犯人は…』
「…総悟だ」
それだけ言って、目を伏せる。アイツの言った言葉が頭に引っ掛かっていた。
"忘れるな"
「(…あれは、夜兎の俺、か……)」
忘れようとしていた矢先に、まさか忘れるなと言われるたァ…
「…屯所に戻るぞ。アイツを捕まえる為にちょいと考える」
『!分かりました!』
踵を返して、その場を立ち去る。人の中を掻き分け、歩いていく間にも…
あの爛々と輝く冷え切った瞳が、俺を見ているような気がした。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年5月24日 2時