話しておこうと思った ページ33
総鬼side
夜…総悟が寝たのを確認してから部屋を出る。
縁側に出た俺は、手にした携帯を開いて番号を打ち込み、電話を掛けた。
『…もしもし』
「"…珍しいですね。貴方から掛けてくるとは"」
『偶にはいいだろィ?…武市さん』
縁側に座り、静かに話しかける。携帯越しの武市さんは、「何用ですか?」と声をかけてきた。
「"鬼兵隊に戻る気になったので?"」
『…その事で話があるんでさァ』
そう、用件はそれだけ。万斉や晋助に直に言ったら拙いから、アンタにかけたんでィ。
『俺は、戻らねェ。沢山悩んで考えた、ケド…俺は此処に残りまさァ』
「"…それは、鬼兵隊を敵に回すと同じ事ですよ。拾い上げた恩を仇で返すと言う事になりますが…それでいいのですね?"」
…それは、嫌でィ。でも…
『晋助達には、凄ぇ感謝してらァ。でもそれ以上に、大切なヤツが出来ちまったんでィ』
何時もつっかかってくるあの栗色を思い出す。その笑顔に、少しだけ口角を上げた。
『悪ィって、言っといてくれィ』
電話を切る。月明かりが射す庭を見つめて、少しだけ息を吐いた。
「何してんだテメー」
突然、背中に重みを感じた。振り返る前に、俺の首元に腕が絡みつく。
『悪ィ総悟。起こしちまったか』
「ん…問題無ェ…」
…とか言って、凄ぇ眠そうな顔してんじゃねーか。
「何話してたんでィ…」
『…あー……ちょいと、鬼さんに巣立ちの知らせをな』
頭を撫でてやって、抱きついてきた総悟の額に口付ける。総悟は少しだけ機嫌良さ気に微笑んだ。
「…早く戻りなせェ。寒くて仕方無ェ」
『へィへィ、分かりやしたよ』
全く…抱き枕係も楽じゃねぇや。総悟を引っさげたまま布団に戻る。
途端に総悟が抱きついてきて、温かい温もりに包まれた。
「明日、一緒に見廻りしやしょ…?」
『ん、約束でィ』
手を握って、総悟が寝るのを見守る。寝息が聞こえたところで、俺も目を閉じた。
8人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年5月24日 2時