楽しいもの拾った! ページ20
神威side
「阿伏兎〜、戻ったよー?」
船に戻って声を出す。いやぁ此処まで運ぶのに手間取っちゃったよ。
第七師団総出で探しても見つからなかったのは、別の人に変身してたからだったんだね。凄いなぁこのお巡りさん。
「たくっ、いきなり外に飛び出して行ったかと思えば…嬉しそうな顔で取ってきたソイツ、死に掛けてるじゃねぇか、団長」
呆れたように溜息をついて出迎える阿伏兎は、俺が担ぐお巡りさんに目を向けた。此処まで来る時に結構暴れたからさ、ちょっと黙っててもらったんだ。
『う……ぅ゛…』
「こりゃ肋数本折れてるぞ……思いっきり握り潰しただろ」
「だって暴れるんだもん」
「もん、じゃねぇ。遊び道具壊したらすぐ駄目になるってのは分かってるだろ」
「すぐ治るから良いじゃないか。それより阿伏兎、治るまでお巡りさんの事任せたよ」
俺は担いでた彼を阿伏兎に投げる。阿伏兎は慌てて彼を受け取ると、深く溜息をついた。
「はいはい。団長様の指示のままに」
「いいね、執事みたいでいいよ阿伏兎。…アイツの子供なんだ、大切に扱ってね?」
やっと見つけた夜兎のハーフ。この船の船員の一人が黙って生み落とした、最悪の天人。
そんな奴を捕まえればさぁ、俺達第七師団も強くなるし、俺も遊べて一石二鳥だよね?
「じゃ、目が覚めたら教えてよ」
俺は阿伏兎に彼を任せてその場を立ち去る。別の部屋に入り、其処に設置されていた巨大なモニターの電源を入れた。
「準備万端だよ、シンスケ」
画面に話しかける。シンスケは口から煙管を離し、薄く微笑んだ。
「"元気だったか?アイツは"」
「嗚呼、それはもうピンピンに。反抗期真っ盛りの子供みたいだったよ」
「"それはテメーも同じだろうが。…後は手筈通り任せる。上手くやれよ"」
「勿論。下手は打たないよ。それに…」
俺は高鳴る胸を抑えて笑みを浮かべる。シンスケが持ち出した条件を頭の中で反芻しつつ、言葉を紡いだ。
「上手く行かなそうだったら、殺してもいいんだろう?」
「"……嗚呼"」
フッと微笑するシンスケが目を細める。ブツリと切れたモニターの前で、俺はこれから起こるであろう事を予想し、楽しみから小さく笑った。
さて…俺の拾ってきた兎は、果たして鬼となるのか狗となるのか…楽しみだなぁ。
真選組の狂犬→←真選組は、二人の事を陰ながら見守っております
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年5月24日 2時