夜の兎 ページ18
総鬼side
その小さな肩を叩こうとした手は、包帯の巻かれた手に掴まれた。明らかに少女の手じゃねェ…っ!
「やっと見つけたよ、お巡りさん」
傘の裏から青年の声がした。俺の手を掴む手に力が入り、骨を砕きそうなその力に思わず顔を歪める。
『離しやがれ…っ』
「嫌だよ。やっと見つけた玩具を手放す子供が、何処に居ると思う?」
傘の裏側に居たソイツが俺の方に振り向く。朱色の髪に、青の目。ソイツは何処か先輩に似ているように思えた。
「へぇ〜…似てるね。あのお巡りさんと瓜二つ!でもアンタは、良い匂いがするね…美味しそうな匂いがする」
そう言ってソイツは隊服の襟を退かす。何するんだと身体を硬直させた直後、首筋に痛みが走った。
コイツ…噛みやがった…っ!!
『止めろっ!!』
反対の手で殴りかかる。その手すらも受け止められては、俺から離れたソイツはにっこりと笑った。
「やっぱり甘くて美味しいね。この黒い帯が邪魔だけど…ねぇ、取っても良い?」
『公然猥褻罪で逮捕すンぞテメェ…っ!!』
何だコイツ…っ、何がしてぇのか全く分かんねェ…!
「駄目なの?なら仕方無いなぁ〜…持って帰ってから取っちゃおうか」
『は?』
今、何て言った?持って帰る?何処に?
考える暇も無く担ぎ上げられる。地面と黒のチャイナ服が視界に入った。って、離せっつってんだろィ…!!力が強くて中々抜け出せねェ…!!
「嗚呼、駄目だよ抵抗しちゃ。…殺しちゃうぞ?」
突然耳元で囁かれた低い声に、背中に冷たいものが駆け抜けた。一瞬動きが緩む。それを好機と捉えたのか、ソイツは俺を抱えたまま歩き出した。
「俺は神威。シンスケの友達みたいな感じだよ。彼からお気に入りの兎が居るって聞いたから来たんだけど…真選組に取られたって言っててさ。仕方無いから阿伏兎に捜させたんだ。良かった見つかって」
シンスケ…、晋助!?その単語を聞いて青ざめる。まさかもう鬼兵隊に戻れって事か…!?
『……行かねェ』
「ん〜?」
『俺は…鬼兵隊には、まだ…っ「あー、心配しないで?鬼兵隊には行かないよ」…は?』
じゃあ、何処に?
「俺と一緒に来てもらうよ、可愛い子兎さん。同じ夜兎同士…派手に殺し合おうよ」
真選組は、二人の事を陰ながら見守っております→←巡回していると色んな人に会う
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年5月24日 2時