分からなくなった ページ16
総鬼side
帰りながら俺は溜息を漏らした。何を勘違いしてたのか知らねぇが、真選組トップ3が何で尾行なんかやってるんですかィ。こりゃあ明日仕事大変だぞ…?俺は休暇届出してたからいいとして、土方さんと近藤さんは明日暫く部屋篭りだろうな。総悟は仕事しねぇから俺がやらねぇと。あ、やっぱ止めよ。面倒だ。
『(でも、まさか此処までとはな…)』
今日心底感じた、総悟の俺への執着。何故此処まで俺に拘るのか?
出会いは俺が我忘れて噛みつくっていう最悪の出会いだし、真選組になってからも気に入られるような事はしてねェ。それなのに、
「総鬼、帰ったら飯食おう。お前俺の隣な」
『何で隣の席なんですかィ。席は自由だろ』
「隊長命令」
『……チッ』
こうやって何かと俺を隣に置きたがる。傍に居たがる。入所当初は目立たなかった事が、最近になって顕著になってきた。
それに…さっきの態度。アレは、部下に見せるような顔じゃねェ…。
『(アレは完全に捨てられたと思った顔だった)』
落ち込むなんて生温いモンじゃねェ。それこそ、言っちまえば絶望の表情。まるで好きな人に無残に捨てられたような顔。そんな顔を、部下である俺に向けた。俺に見せた。何でだ?
隣を歩く総悟を見る。先程とは打って変わって、普通の態度になっていた。でも微かに嬉しげだ。いつもは少し先を歩く総悟が、今は俺にくっつかんばかりに隣を歩いている。
『(…変な奴)』
俺に何かとつっかかってきたりする割には、離れる事を嫌う。そんなコイツの事が、益々分からなくなった気がした。
何を考えているのか、俺に対してどんな感情を持ち合わせているのか、それが今では闇の中だ。
夕暮れの赤い世界の中、屯所が見えてくるにつれて早足になる。俺は三人より少し速度を落とし、後ろを歩いた。懐に手を入れ、貰った手紙を再度開く。
"拝啓、沖田総悟様。ずっと前から貴方を見ていました。身分違いとは思いましたが、この気持ち抑え切れません。故にこの恋をきっぱりと諦める為に、一度だけ私と付き合ってください。敬具"
『…こんな手紙に妬いた俺も、どうかしてらァ…』
賑わう屯所から少し離れた道で呟く。俺は手紙をビリビリに破り捨てて、屯所へと戻った。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年5月24日 2時