唯一無二の存在 ページ11
総鬼side
「嗚呼、そこの君。前預かった刀、打ちあがったぞ」
マガナギ騒動から一週間後。特に変わり無く時間ってのは流れて、俺は今あの刀鍛冶の元に来ていた。
「お〜…直るもんだな」
総悟と一緒に。
『いや、何で一緒に来てるんですかィ』
「暇だから」
『仕事は？』
「暇だから」
『テメーサボる気だな？』
「暇だか『聞き飽きたわその言葉はよォっ！！！』
ちゃんとやらねぇと叩き斬るぞ！？
胸倉を掴めば「まぁまぁ」と降参とばかりに総悟は両手を挙げた。
「たくっ、日に日に土方化してるじゃねぇか。ちょいと躾けてやろうかィ？」
『それはこっちの台詞だ。俺をサボりの口実にするんじゃねェ…！』
「あの…刀…」
『あ、悪ィ』
総悟と言い争ってる場合じゃねぇや。
俺は打ち直された刀を手に取る。ヒビはもう無く、綺麗な黒の刀身に俺の顔が映った。
「意思はもう残ってないみたいなんだ。やっぱりあの時、君を護る為に消えてしまったらしい…」
『…それでも良いんでさァ。コイツが戻って来ただけで良しだ』
俺は刀身を撫でて笑う。…そうだ。
『なァ、ちょいと文字打ってくれねぇか？無銘…つーか無名じゃ格好つかねェ』
「構わないが…どんな名前を？」
「菊一文字RX-『違う』ちぇっ」
それはもうあるだろうが。俺だけの剣がいい。絶対に無い名前が。
『…大和守高定』
「大和守…？」
『嗚呼、それがいい』
俺だけの刀。唯一無二の刀の名前は、それでいい。
銘に名が刻まれる様子を見守りながら、ちょっとだけアイツの事を思い出した。
「出来たぞ。君の愛刀…大和守だ」
刀身を受け取り、刀として組み立てた後振ってみる。いつも通りの使い易さ、手に馴染む感覚に嬉しくなった。
「大層な名前で。きっと喜んでるぜ？」
総悟がククッと笑う。鞘に仕舞って腰に提げれば、誇らしげにその黒い身体を目立たせた。
『お帰り、高定』
やっと戻って来た愛刀に声をかけて、総悟と一緒に鍛冶屋を出る。まっさらな空の下を二人で歩きつつ、何処を廻ろうかなんて話しながら町の中を歩いて行った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 8人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2023年5月24日 2時
