旦那の強さ ページ1
総鬼side
凄ぇや…。
「貴様ぁぁあぁっ!!!」
マガナギが怒りに任せて刃を振り下ろす。地面を割り砕く一撃の先に、旦那の姿は無かった。
上だ。跳躍した旦那が、マガナギの背後から襲い掛かる。
「テメーが今まで何本刃喰ってきたか知らねーが」
煙を割って刃が振り下ろされる。マガナギが気づいた時には、刃がすぐそこまで迫っていた。
「こっちゃ、潜ってきた刃の数が違ぇんだよ!!」
勝つ。旦那の勝ちで終わる。
振り下ろされた刃が、マガナギの顔に降り注いだ。
ぺチン、と小さな音がした。思わず目を丸くする。
確かに刃はマガナギの顔を直撃していた。が…
『…流石鈍』
期待を裏切らねぇなホント。
旦那の持つ剣は、へにゃりと飴細工のように曲がった。あ、飴じゃねぇな。紙だ紙。
「…オイ、総鬼」
『予想してやしたよ。途中から刀身がプランプランしてたんで』
旦那がマガナギの猛攻を躱す最中、必死で硬度を維持しようとしてたようだが…流石に切れたか。何か凄ぇ言い争ってるが、目の前の奴さんが待ってくれると思っちゃあ駄目ですぜ?
「いいアドバイスをありがとうよ」
一瞬にして旦那の背後に回ったマガナギが刀を振る。再度始まった斬撃の嵐に、旦那は紙一重の避けを見せる。
ほぉ…動きがさっきと違うじゃねぇか。
『マガツキ、テメーの兄さんやるじゃねぇか』
【兄さんには喰った人達の経験と戦術パターンが全部詰め込まれてる。総君の身体が完全に支配された今、兄さんにあの人が勝てるかどうか…っ】
成程、俺と同じってか。話が合いそうだ。
『テメーも同じなのか?マガツキ』
【ま、まぁね…。でも兄さんの方が強いよ】
何言ってんだ。当たり引いてる奴が弱気だと、本当に俺ァあのマガナギに身体取られちまうぞ。
「…総鬼」
『何ですかィ近藤さん』
劣勢へと転がっていく旦那の様子を見つつ、近藤さんが険しい顔で俺に声をかけた。
「…準備しとけ」
『へーィ』
座り込んで見ていた俺は立ち上がりうんと伸びをする。旦那には悪ィが、あとちょいしたら行きやすかねィ。
旦那の足元に刃が突き刺さり、それで体勢が崩れる。その隙を逃さずにマガナギは旦那に突っ込んでいく。今だな。
〔もう止めて。二人共もう止めて!〕
俺より先にマガナギの足元に飛来した声が響き渡る。それは真っ赤な色をした…鞘だった。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年5月24日 2時