第一幕 -炎帝祭- ページ8
鍾離side
隣に立つ旅人の表情は暗かった。思案するように視線が落ち、その顔には"どうにかしたい"と思う心が浮かんでいた。
「(本当にお前は、どこまでも心優しい……)」
だからこそ璃月の災難に立ち向かい、乗り越える事が出来たのだろう。お前のような友に出会えた事はとても誇らしい。
「鍾離先生、俺達に出来る事ってあるかな……？」
旅人が俺へと視線を向ける中、じっと見つめてくる黄金を前に「それならば」と一つ提案した。
「"天権"の彼女に会いに行くといい。炎帝祭は彼女の指揮下で執り行われている。きっと事件の事も耳にしているだろう」
彼女であれば既にこの一件も耳にしている筈だ。お前達からの頼みであれば断る事も無いだろう。
「彼女は倚岩殿で儀式の祭壇を組み上げている筈だ。俺の用事はほぼ済んだから、早速行ってみるといい」
「分かった！ありがとう先生…！行こうパイモン！」
「おう！またなー！鍾離ー！」
「あぁ、良い炎帝祭を」
手を振って走っていく彼らを見送る。その背中が見えなくなったところで、俺は踵を返して往生堂へと歩みを進めた。
「………っ」
ズキ、と胸が痛む。まるで焼けるように、胸が痛む。
ジリジリとした鈍い痛みと共に訪れるは、いいようのない破壊衝動。
「………ふー……っ」
今日は朝からおかしかったが、流石にここまで来ると無視はできないな……。一日休みを貰うか……？
……いや、俺が抜けては炎帝祭が進まない。炎帝祭の全容を知っているのは俺だけだ。勝手に席を離れてはいけないだろう。
「(万華創花の盗難に、これか……。炎帝祭をやると決まってから、日に日に痛みが増している……)」
それは不安の予兆のようで、酷く胸がざわついた。
往生堂の扉を開け自室へと向かう。椅子に座り窓を開けると、璃月の温かな風が室内に入り込んできた。
この地はあの時から驚くように発展した。人々は魔の恐怖に怯える事無く、笑顔のままで過ごしている。
嘗て彼奴と描いた世界が、目の前にある。
"モラクス"
「………フォルファクス……」
炎帝祭。狂気の末に自我を蝕まれ、己を喪った唯一の友よ。俺の生きる世は、お前が望んだものになっているぞ。
できることならお前ともう一度、今の世を歩きたかった。
胸の痛みは、心を刺すように強く痛んだ。
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九龍(プロフ) - もにもちさん» ありがとうございます！更新は遅くなると思いますが頑張らせて頂きます！ (12月11日 2時) (
レス) id: c0b6840b43 (このIDを非表示/違反報告)
もにもち - わぁーー璃月きましたか！！めっちゃ待ってました！楽しみです！！これからも頑張って下さい！！ (12月10日 15時) (レス) @page4 id: 4864a15202 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2023年11月26日 14時
