待ってるだけはもう御免だ ページ6
土方side
「いいんですか？土方さん」
かけられた声に、俺は門を見つめたまま頷いた。
「これでいい。総鬼を止められるのは、アイツだけだからな」
ずっと一緒に居たからこそ、アイツの声にしか反応しねぇだろう。あの目は…そう言う目だった。
アイツが斬られた時、対峙した時に見えた揺らぎ。あの赤は…アイツの色だった。まだアイツは呑まれてねぇ。
「でも、総鬼さん相手に一人で挑むのは…」
「自滅行為だろうな。だから、俺も行く」
「…！」
負け戦ってのは重々承知だ。でも、総悟もアイツも死なせる訳にはいかねぇ。少なくとも、まだ今の状態じゃ月光を手放す事が出来れば救える状態だ。あの刀をぶっ壊す為には、隙を突く必要がある。
「お前らも人斬りの正体、確かめに来たんだろ？なら付き合え」
見に来ただけ、とは言わせねぇからな？
「勿論です…！だって、総鬼さんは僕達、万事屋のメンバーですから！」
「…そうよ。アイツは、万事屋のメンバーなの」
屯所から顔を出したチャイナ娘が、掌の何かを見て呟いた。
それは…見覚えがあるものだった。緑色の綺麗な三つ葉のヘアピン。アイツが万事屋に行く時に、必ず胸元に付けていた物だった。
「神楽ちゃん…！」
「…コレ、昨日私が泣いてる時、落ちてきたの。きっと昨日、後輩が私の所に来て置いて行ったのよ。泣かないでって…」
ぎゅっとヘアピンを握り、チャイナが俺を真っ直ぐ見つめた。その決意に満ちた瞳に、俺は目を細める。
「だから、もう泣かない。また後輩に、総鬼に渡して言うんだ。もう泣かないよって。もう、あの時の泣き虫で甘えるばかりの私じゃないって、教えに行くアル…！」
「…そうだね。もう僕達は昔みたいに弱くない。もう、銀さんや総鬼さんばかりに任せっきりじゃない。僕達の足で何処にでも行ける。この手で守れるって事を、教えに行かないと！」
…っは、やっぱお前らも、アイツの家族だな。
「…行くぞ。しっかり準備しとけ」
何が出来るかなんてのは、その場に行ってみねぇと分からねェ。が、それでも行かなきゃならねぇんだ。
馬鹿やってるガキ共の喧嘩を、いつでも止められるようにな。
最後まで抗えと、そう教わったんでィ…！→←もう一度、あの場所で
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作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2023年6月15日 2時
