これ以上好き勝手させるか……! ページ11
沖田side
「っ、ゲホッ…」
吐き出した血が足元を濡らす。斬られた傷口から、肉が焼けるような臭いがして吐き気がした。
あれからずっと戦って、俺も総鬼もボロボロだ。それだってのに総鬼はまだ立ち上がる。右腕を失い、血の気を失った青白い顔は真っ直ぐ俺を捉える。水色の着物も、その中のシャツももう真っ赤に染まって、手に巻かれた包帯から吸い取りきれなかった血が滴り落ちていた。
「…くそっ…」
きっと、アイツも限界は迎えてんだ。それを月光が無理に操って立たせてる。負けようとしても負けさせてくれねぇってか…最悪な兵器だな、こりゃあ…っ
ふらつく足をぐっと踏み締めて、真っ直ぐ睨みつける。暗い夜空を背に見える黄金の瞳は、満月に似た輝きを放っていた。
その月を割るように走る。待つように佇む総鬼の懐に、一気に飛び込んだ。
もう何回も斬られてる。毒なんざ、気にならねェ…!!
真っ直ぐ白い刃が振り下ろされる。その刃目掛けて剣を振るった。ガチンッと音がして鋸みてぇな刃の溝に白い刃が嵌る。そのまま、俺は刃を砕こうと手首を捻った。
「…っ!?」
刃が砕ける事は無かった。腹に突き刺さった熱い激痛の元に視線を落とす。俺の腹を、深々と短刀が刺し貫いていた。それは此処に来る前、土方さんから貰ったあの短刀だった。
コイツ…懐に仕舞ってたコレに気づいたってのかよ…っ
「…ほんと、ふざけんなって…」
刀を持つ手から力が抜ける。ガシャリと加州が地面に落ちると同時に、血塊を吐き出した。
『…もういい』
そう小さく呟いた声は、俺の意識を微かに繋ぎ止めた。
『もう、良い。逃げてくれ…っ』
あぁ…雲がかかって、影が……。そうか…影の下じゃ、動けなかったんだっけか……。
短刀の柄から手が離れる。ふらつく俺の頭上に、真っ白な刃が振り上げられた。きっと身体は月光に取られたままなんだ。だって…
『逃げてくれ…っ、総悟……っ!!』
だって、目の前にある顔は、俺の大好きな奴の顔だったから。
「……嫌だ」
もう逃げないって決めたんだ。もう離さないって、決めたんだ…っ
だから、だからもう、お前の前から逃げない……っ!
振り下ろされる真っ白い刃が、月の光を浴びて輝いた。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2023年6月15日 2時