参拾肆:訓練開始 ページ35
実side
「ぅ゛え゛…っ!?」
吐くようなくぐもった声と共に、ドンッと殺しきれなかった蹴りの衝撃が虎杖の背中を突き抜けた。
そのまま虎杖の体を蹴り飛ばすと、右腕に噛み付いている玉犬の眉間に釘を叩きつける。「ギャンッ!」と悲鳴を上げて離れた玉犬を振り払うように突き飛ばしてから、足に力を込めて一気に加速した。
向かう先は、伏黒の懐だ。
「っ!?」
低い姿勢で懐に飛び込めば、焦りの表情を浮かべる伏黒の顔が見える。
拳を握り締めて顎に叩き込もうとした瞬間、背後から聞こえた微かな風切り音を聞き取って、咄嗟に拳を振り返ると同時に振り切った。
「させないっての!」
手の甲にぶつかったのは釘だ。俺の気を引く為に放ったか。
伏黒も今の一瞬で後ろに撤退し距離を取られた。虎杖も瓦礫の中からもう起き上がってきてる。やっぱりタフだな。
『…』
やるしかないか。カランと落ちる釘の音を聞きながら、自分の内に意識を向けた。
青い炎と赤い炎のイメージが現れる。青い炎が俺の呪力、赤い炎がコトリバコの呪力だ。
「釘崎!」
「急かすな!"芻霊呪法"…っ!」
宙に投げられた釘に呪力が篭る。イメージを脳裏に描いたまま、俺は青い炎の方の火力を上げた。
『"生力創術"…!』
炎が全身を燃やすようなイメージだ。火力を上げろ、全身に流すように…!
拳を中心に呪力を集約させる。途端に目の前から3本、釘が飛んできた。
さっきより速い…!呪力もかなり篭ってるな…っ
『(だが行ける…!)』
釘を迎え撃つように拳を振るう。真っ直ぐ放たれた拳は鋭い釘の切っ先に触れた瞬間、込めた呪力を爆発させた。
目の前で弾けるような爆発が起こる。爆発によって釘の勢いが削がれ、天井にカカッと音を立てて突き刺さった。
数日一緒に居て分かったことがある。釘崎が持つ釘の数は有限、使い切らせれば何も出来ない…!打たせるだけ打たせた方がいい!
すぐに足に呪力を込めて強化し、跳ぶように駆け出す。と、足首に何かが巻きついてグンッと体が後ろに引かれた。
「"蝦蟇"!」
伏黒の式神…っ!
『っ、コイツ…!』
蛙の舌を引き千切るように振り払うと、視界の隅で釘崎が不気味に笑うのが見えた気がした。
「"簪"」
『っ!!』
パチンッと指が鳴る音。それと同時に、天井から音がした。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2021年1月12日 16時