呪箱異譚 (ページ19)

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拾捌：腹を括れば問題無いページ19

伏黒side

｢結局アイツは何なんですか｣
｢え？僕の教え子だけど？｣

予想通りの返答だった。
4人で散々遊んで解散した後、俺は部屋に戻らずにそのままの足で五条先生の後を追った。榎森について聞きたい事があったからだ。

「受肉体って事は、アイツの体にコトリバコが入り込んだって事ですよね。なのに体内にはコトリバコを封印している箱があるって、おかしくないですか？」

そうだ、普通に考えればおかしい。何で封印されている箱が存在するのに、アイツがあんな状態になってるんだって話だ。
虎杖のように呪物を直接取り込んだわけじゃねぇ。封印している物を取り込んだんだろ？なのに何であんな姿に……。

「あー、その事か。あれはね、隠れ蓑みたいなもんなんだよ」
「隠れ蓑？」

俺が詳しく訊くと、先生は迷わず話してくれた。

先生によると、榎森に憑いたのはコトリバコの中に居た呪霊だという。
榎森はコトリバコの呪霊を受肉した状態で玉手箱に封印された。今の榎森は呪力の殆どを収めている箱が生命線であり、その箱を守る為に人の形をとって行動できるようにしているらしい。

「言ってしまえば榎森実という肉体はコトリバコにとって移動手段であり、肉の鎧なんだ。完全に受肉体として覚醒するまでは、玉手箱をどんな手を使ってでも守らないといけないからね」
「…守る以外の事をしていないから、意識が反映されてないんですか」
「かもね。そればっかりは本人に聞くしか無いって感じかな」

…そうか。そうなのか。
手を固く握り締める。これで何人目だ？呪いに良いように利用される人間が現れるのは。

「ちょっとだけ彼の事を知って、何か変わったかい？」

先生の軽い調子の声に、俺は顔を上げて頷いた。

「少なくとも、アイツが助けるべき人間なのは分かりました」

もう呪いに翻弄される人間を見るのはたくさんだ。
目の前に助けられる人間が居るなら、俺は助けたい。

俺の返答に、先生は笑った。

｢守ってあげてよ。あの子、寂しがり屋だからさ｣
｢……はい｣

アイツは、どんな奴なんだろうか。そう思うと、アイツの事をもっと知りたくなった。