拾漆:実に奇妙で興味をそそられる ページ18
虎杖side
「はぁ〜っ、つっかれた…!」
ボフッとベッドに飛び込んで、盛大に息を吐く。
あれから榎森の部屋で皆と一緒にゲームして映画見て、それからたくさん喋った。
榎森は終始無言だったけど、俺が手を握った時ちょっとだけ嬉しそうだった気がする。
「仲良くなれっかなぁ〜……」
同じ境遇だし、アイツから悪い感じはしないんだよな。
呪霊の所為であんな見た目になったって言うなら、もしかしたら元の姿に戻る可能性だってあるわけで、俺達が戻せるかもしれないってことで…
「…アイツも、ちゃんと救えるかな」
戻れるなら戻って欲しい。ちゃんと目を見て、声を聞いて話してみたくなった。
【貴様のような小僧に何が救えるというのだ】
頬に違和感を感じた。グパッと肉が割れて、そこから卑らしい低い声が面白そうに漏れ出た。
【しかしあの男、実に面白い。興味が湧いたぞ】
ゲラゲラと嗤う宿儺の声に、俺は「ちょっかい出すなよ」と口を尖らせて忠告した。
コイツは表に出すと碌な事をしない。むちゃくちゃな事するし、隙があれば仲間を殺そうとする。そういう奴だ。
【あれほどの呪いを飼いながら狂わずに生きているとは……実に面白い】
「…!それってもしかして、榎森の自我はまだしっかりあるって事か?」
【さてなぁ。だが少なくともあ奴の中には魂が2つ存在している。だが一つの魂がもう一つの魂を拒絶した結果、あのような不完全な肉体に成り果てているのだろう。ケヒッ、実に滑稽な事だ】
魂が拒絶……。じゃあその拒絶が無くなれば、榎森は元に戻れるって事か。
でも、そうだとしても…その2つの魂が榎森自身の魂と、コトリバコの魂だったら…元に戻った時、どうなるんだ?
まさか、呪霊として成長しちゃう、とか?
【乳臭い幼子の呪いなど心底どうでも良いが、奥底に眠る奴は興味を唆られる。まだ未熟だが、育てればいずれ…】
「だからちょっかい出すなって言ってるだろ」
【フン、つくづくつまらん小僧だな】
「悪かったなつまらん小僧で!」
むかつく言葉に大声で反論してから、仰向けに寝転がって天井に視線を投げた。
「でもやっぱ、俺は人に戻してやりたいな…」
人間らしくしてやりたい。アイツが人として正しく死ねるように、人として生きられるように。
「(そうじゃないと、目覚めが悪すぎるよな)」
目を閉じて、深く深呼吸をした。
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作者名:九龍 -くーろん- | 作成日時:2021年1月12日 16時