拾陸：興味の有無 ページ17
虎杖side
「それにしても質素だよなぁ…」
4人で映画鑑賞しながら室内を見渡す。
榎森の部屋ってさ、ほんとに何にも無ぇの！家具も真っ白で装飾の無いやつばっかりだし、何かゲームで言う初期設定の部屋みたいでさ。まだテレビがあるだけマシかもしれんけど……
「榎森ってさ、自分の物とか持ってねぇの？」
隣で映画を見てる榎森にそう尋ねても、無言でずっとテレビを見てて反応してくれなかった。
「まぁ答えてくれないよな〜…」
雰囲気にも変化は無い。じゃあ…
「先生は何か知ってる？」
榎森の隣でアイスを食べながら映画を見ていた先生に声をかけたら、伏黒も釣られて先生の方を向くのが見えた。
「ん？あぁ、実の事は僕も全く知らないよ？それに答えないって事は、興味が無いんじゃないかな？」
「興味が無いのかぁ…。それってさ、つまんなくない？」
俺は視線を映画に移して、クッションをちょっとだけ強く抱き締めた。
「だって色んなものに対して興味が無いのってさ、生きてるって感じしなくないか？興味があるから話すし、行動するじゃん？」
「さぁねぇ。少なくとも、今の実はそうなんだよ」
先生はそう言って苦笑する。伏黒は何か思うことでもあるのか、少しだけ目を伏せていた。
じゃあ、じゃあさ、
「俺が教えてもいい？興味ってヤツ」
知らないより、知った方が楽しいじゃん。
「何言ってんだお前」
「いや、自分でも何言ってんのか分かんないけどさ。興味が無いって言うのは関心が無いってことでもあって、それって寂しいと思うんだ。折角こうして会えたのに、興味持たれないってのもなんか嫌だし」
「な、榎森」と声をかけて榎森の手を取る。
榎森が俺の方を向くと、黒い手袋に覆われた手をしっかりと握って、ニっと笑って見せた。
「これから俺と、俺達の事を知ってもらってさ、興味持ってもらいたいんだ。俺達も榎森の事知りたいし！な、伏黒！」
「……まぁ、そうだな。知らないよりか、知った方が幾分か安心する」
「だろ？これから仲良くしようぜ榎森！とりあえず映画見終わったらゲームしよう！」
「いいね！僕もやる〜♪」
「何でそうなるんだよ！今日は寝ろ！」
「「え〜！」」
『……』
ワイワイはしゃいで、話してさ。そしたら興味湧いてくるだろ？
少しでも距離が縮まったらいいな……！
拾漆：実に奇妙で興味をそそられる→←拾伍：襖の向こうから聞こえる声
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作者名：九龍 -くーろん- | 作成日時：2021年1月12日 16時
