呪箱異譚 (ページ40)

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参拾玖：徐々に分かってくるページ40

虎杖side

交差する刃と拳が、熱い風を孕んで互いに喰らいつこうとする。
榎森が振るう刃を躱して拳を叩き込む。でも榎森の方も躱して刃を叩き込んでくる。激しい速度で繰り返される緊迫したこの時間の中で、俺は刃の法則性が次第に目に映るようになってきた。

俺は拳や蹴り、体術メインの攻撃を主体にしてる。だからあっちからしたら距離をとって戦いたいんだ。でも俺が懐狙ってくるせいで上手く距離が取れないでいる。その時振るう刃は鞘に収めることなく、普通の刀として振ってくるんだ。

「(一番怖いのは距離取った時の居合いみたいな構えで放つ攻撃だ。きっとあれが一番強い…！)」

"一刀"とかそんな名前で放たれたあの一撃は、俺の眼じゃ捉えられなかった。あれをやられたらまずい…！
刃を打ち返して回し蹴りを放つ。脇腹を捉えた俺の足は榎森の身体を横に吹っ飛ばした。

『ぐっ…！』

くぐもった声と共に煙を立てて榎森が転がる。起き上がろうと地面に手を着いた瞬間に、その手を縫い留めるように釘が数本突き刺さった。

「"簪"！」

金槌を取り戻した釘崎が叫ぶと、ピリッと呪力の光が走った。
途端に榎森の手が何かに弾かれたように血を振り撒きながら爆発する。指がぐちゃぐちゃに折れ曲がり、握っていた刀が落ちる。痛みを耐えるように歯を食いしばる榎森に、俺は掴みかかるようにして馬乗りになった。

「とった！」

首を掴んで叫ぶ。締めるつもりは無いけど、一応力入れさせてもらう！だって怖いし！！

『……お前強いよな』
「えっ！？榎森の方が強くない！？何あの抜刀術！もうあれる○剣じゃん！牙突できるんじゃね？」
『いやできねーわ、流石に無理だわ』

え～？俺は出来ると思うけどなぁ～？

「でも強いってのすっげぇ分かった。俺ももっと強くならなきゃな！」

笑ってやると、榎森は小さく微笑んだ。元の調子に戻ってるな…。さっきめっちゃ怖い顔してたからさ、コトリバコ出てきたのかと思っちまった…

『じゃ、もうちょい付き合えよ』
「え？」

榎森の言葉が聞こえた瞬間、音が消えた気がした。
釘崎の声が遠くで聞こえる。ふわりと笑う榎森の目に、ギラギラした闘志の光が灯るのが見えた。

『まだ、降参とは言ってねぇだろ』

「……あはっ」

後ろで、伏黒の笑い声が聞こえた。